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2007年01月22日(月) 00時00分

番組捏造 TV業界として究明を 東京新聞

 テレビ番組における「やらせ」や捏造(ねつぞう)の続発は、もはや個別会社の不祥事ではすまされない。視聴者の信頼回復へ向けて、関西テレビの問題を業界全体で検証、究明し再発防止策を確立すべきだ。

 関西テレビが制作し、フジテレビ系で七日に放送された「発掘!あるある大事典2」には事実と異なる点が六カ所もあったという。

 架空のデータ、実験と無関係な映像、でっち上げた研究者コメント…いずれも「納豆を食べればやせられる」という番組の趣旨を支える根幹部分である。これでは番組自体が捏造というしかない。

 放送直後から納豆が売り切れる店が続出し、メーカーは増産に追われた。番組捏造は視聴者を欺き、社会を混乱させた悪質な行為だ。関西テレビだけでなくテレビ放送全般に対する信頼を大きく揺るがす。

 「発掘!あるある大事典2」は関西テレビが番組制作会社「日本テレワーク」に発注し、そこから複数の会社に孫請けに出されていた。

 ところが、実際に制作した会社がどこなのか、関西テレビの番組責任者は捏造を承知していたか、現時点では不明だという。

 誰が番組を作り、制作、管理の責任を誰が負っているのかも分からない体制で、視聴者に大きな影響を及ぼす番組が送り出されていたのである。無責任ぶりにあきれる。

 視聴率は民放の生命線である。局としては番組制作コストを削減したい。下請け、孫請け会社は発注局を喜ばせる番組を作らないと生きてはいけない。テレビ界ではさまざまなプレッシャーが面白おかしさ優先、正確さ軽視につながりやすい。

 しかし、関西テレビは二年前に別の局の情報番組制作でも実験結果を捏造した日本テレワークに下請けさせたのだから、危機管理意識がなかったと言わざるを得ない。

 現状ではテレビ局が主張する「公共性」がしらじらしく聞こえる。

 早急に倫理逸脱、暴走を防ぐ体制を確立しなければならないが、不祥事は以前から続発している。各局とも対岸の火災視はできまい。透明な形での共通の取り組みが必要だ。

 有識者、視聴者を含む委員会で問題の番組の企画から制作、放送までを綿密に検証し、結果を公表しなければならない。得られた教訓は社会的に共有し、再発防止策の確立に業界全体で取り組むべきだ。

 このままでは公権力の介入がますます強まる。早くも総務省が行政指導に乗り出す構えだ。業界が自浄力を発揮し、視聴者の信頼を回復しないと「放送の自由」は守れない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20070122/col_____sha_____002.shtml