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2007年01月22日(月) 00時33分

行政手腕は未知数 「そのまんま知事」に期待と不安朝日新聞

 談合事件で知事を失った有権者が次に選んだのは、お笑いタレント候補だった。21日投開票された宮崎県知事選は、保守分裂のすき間を縫って、そのまんま東氏(49)が当選した。行政手腕は未知数の東氏に、有権者からは様々な声が聞かれた。

支持者から花束を贈られ、初当選を祝福されるそのまんま東氏=21日午後8時48分、宮崎市内のホテルで 

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 タレントから転じて知事の座を射止めたそのまんま東氏。有権者は、どんな思いを託したのか。

 「キャラクターと知名度で選んだ。明るい宮崎をつくって」と、宮崎市の主婦(43)は期待する。同市の会社員男性(24)も「宮崎の知名度を上げ、経済を立て直してくれるはず」。朝日新聞社が実施した出口調査では、投票の際に「候補者個人の魅力」を重視したと答えた有権者のうち、約半数が東氏に投票した。

 「しがらみのなさ」で選んだ人も多い。延岡市の会社員男性(35)は「政治的に無色なので斬新に県政を変えてくれそう」。宮崎市の主婦(30)も「当たり前にされてきた悪い慣習を打ち破って」とエールを送る。

 数値目標を盛った東氏のマニフェストについて、延岡市のアルバイトの女性(29)は「しっかり勉強している」。都城市の主婦(27)は他候補に入れたが、「芸能人の応援はなく、意外にまじめで、最後まで迷った」と話した。

 拒絶反応を示す人もいる。別の候補に投じた宮崎市の会社役員の男性(73)は「宮崎を笑いものにはさせない。お笑いをやっていればよかった」。同市の会社員女性(58)も「うわべだけの政策を並べている。一度でも不祥事を起こした人は信用できない」と手厳しい。

 行政、政治経験がゼロの経歴に不安を語る声もある。同市の無職男性(67)は「県民がバックアップしないと。選んだ、任せたでは、宮崎はそのまんまどこへ行くのか、となってしまう」。

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 まさかまさかの「そのまんま知事」誕生に、東氏を知る人々は、期待と不安を口にした。

 漫才で相方を務めていたタレントの大森うたえもんさん(47)は、「努力家で、夢をあきらめない人。こんど2人で漫……、いや万歳したい(笑)」と話した。

 貧しかった修業時代、こんな話を聞いた。

 「フランス人になりたい」

 東氏は小学校時代、将来の夢について、担任の先生への連絡帳にこう書いた。スタイルが良くなりたいという程度の意味だったらしい。

 先生から戻ってきた連絡帳には、赤ペンで「がんばればなれます」と、書かれていたという。

 「この時から、どんな夢に向かってもがんばれるようになった」。東氏はそう話したという。

 早大第二文学部と政経学部の両方で教えていた元鎌倉市長で早大客員教授の竹内謙さんは「先進的な自治体の政策を研究する講義だった。講義が終わると、詳しく聞きに来る。とても熱心だった」と話した。当時から、県知事選に出たいと口にしていたという。「政党や利益団体に頼らずに勝った。今の気持ちを忘れないでほしい」

 第二文学部の卒論を指導した浦野正樹教授は、「現地調査して一生懸命書いていた。『優』をつけた」。ただ、「政治家としての力は白紙。ノウハウもないだろうし議会や課題にも詳しくないだろう。知事としては期待と不安の両方があります」。

 第二文学部で教えた経験がある作家の関川夏央さんは、当選の知らせに「え、本当ですか」。

 「講義をほとんど休まなかったという記憶がある。人柄も、リポートも、きまじめで、どちらかと言えば愚直な印象だった」と振り返る。

 「政治家の資質があるとはみえなかったが、当選してしまったからには前向きに努力してほしいと思う」と苦笑した。

http://www.asahi.com/politics/update/0122/001.html