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2007年01月21日(日) 23時44分

とっとりトーク 裁判員制度に理解を読売新聞

鳥取地方・家庭裁判所長に就任した 前坂 光雄さん 58 鳥取市

 2009年5月までに始まる裁判員制度。重大事件の刑事裁判に国民から選ばれた裁判員が参加する制度で、地裁などは21日、鳥取市の県民文化会館で裁判員制度に関するフォーラムを開き、県民に理解を深めてもらう。昨年12月27日に着任したばかりの前坂さんに地裁の取り組みを聞いた。

——着任されてもうすぐ1か月ですね

 1973年の任官以来、名古屋地裁を振り出しに東京地裁や大阪高裁などに勤務しました。県内は、観光旅行で鳥取市の賀露や三朝温泉に来たことはあるのですが、住むのは初めて。北には海、南は山が控えていて風光明美。魚もおいしいですね。

——裁判員制度の導入が近付いています

 これまでの刑事裁判に大きな問題があったのではないでしょうが、外国の事例も参考にして、国民の感覚を裁判に反映させるべきという要請があったのだと思います。裁判官と国民の感覚がかけ離れていて、制度導入で距離が縮まるとしたら有意義なこと。それに事実認定は、裁判官でなければできないものではありませんからね。

——導入に向けた準備は?

 設備面では、3月末に裁判員裁判用の法廷を整備する工事が終わります。将来、視覚的に分かりやすいプロジェクターなどの機器を使うことを見据えて、配線を通すために床を上げ、逆に法壇は下げて、裁判官、裁判員、証人の視線の高さが同じになるようにしました。一段高い位置に9人が並ぶと、被告人などには威圧感があると思います。今までも上から見られている印象があったでしょうし、私も裁判官として証拠資料を弁護人などに見せる時、高さに違和感がありました。

——広報にも力を入れていると聞きます

 弁護士会と検察、裁判所の法曹三者で05年12月、鳥取市の国府町中央公民館で裁判員の選ばれ方や制度の意義を説明する1回目のフォーラムを開きました。21日に開く2回目のフォーラムでは、裁判官による制度の概要解説のほか、会社経営者や大学講師が登壇してのパネルディスカッションを計画しています。そのほか、1年前からは公開講座を開き、親子を対象にした模擬裁判や公民館への講師派遣などを実施。県内の主要企業を訪問して、裁判員に選ばれた従業員の休暇制度の整備もお願いしています。

——制度周知への課題は

 どちらかと言うと、県東部での広報が中心となっており、県中部や県西部での活動が少ないと感じています。裁判員裁判は、鳥取市の本庁だけで行われることになるでしょうが、倉吉、米子両支部管内の方も当然、裁判員の候補となります。制度を説明するための裁判官派遣など人的な面もあり、なかなか難しいですが、県内全域でもっと広報活動を行う必要があると思います。

 裁判員になりたくない人が多数を占めるというアンケート結果を新聞で見ました。第1回フォーラムのアンケートなどでも「裁判員は辞退できるのか」「自分が他人を裁いていいのか」などと思っている人が多く、制度の中身や理念を伝えることで、そうした不安が解消できればと思います。

——所長としての抱負を

 県民が困っている時、気軽に裁判所に来てもらうのが理想です。法律的な問題を解決するために司法の様々な制度がありますが、敷居が高いと思われるのはよくありません。金銭面でも、法テラスの民事法律扶助制度など徐々に整備されつつあります。司法改革も仕上げの時期。広報に力を入れて、親しみやすく、利用しやすい裁判所を目指したいと思います。

(聞き手・佃拓幸)

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tottori/news001.htm