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2007年01月21日(日) 03時09分

介護予防の要件緩和 厚労省1年で見直し 対象者増えず朝日新聞

 介護が必要になる前に運動などで予防してもらおうと導入された「介護予防事業」について厚生労働省は、参加するお年寄りを決める要件を緩和するなど制度の運用を大幅に見直す方針を固めた。昨年4月の介護保険制度改正の目玉として導入されたが、要件が厳しくて対象者が増えず、運動教室が開けないといった指摘が出ていた。今年4月から実施する考えで、導入後1年での見直しとなる。

「特定高齢者」チェックリストの主な項目

お年寄りがインストラクターの指導に従って運動する介護予防教室=千葉市美浜区の「いきいきプラザ」で

 この事業は、近い将来介護が必要になりそうなお年寄りを市町村が「特定高齢者」に認定。体力アップ教室などに参加してもらい、要介護や要支援の状態になるのを水際で防ぐ。介護認定を受けていないお年寄りが対象で、今年度の事業費は320億円。高齢化で膨らむ介護保険給付費を抑える狙いもあり、厚労省は、この事業などで今年度の介護保険給付費を約1500億円減らせると見込んでいた。

 特定高齢者に当たるかどうかは、健康診断などの際に運動機能や口の中の健康状態(口腔(こうくう)機能)、認知症、うつなど25項目の質問に答えてもらい、医師の問診や血液検査の結果などを総合して市町村が判断する。

 厚労省は特定高齢者は65歳以上の5%程度いると想定していたが、昨年9月の状況を全国1838市町村で調べたところわずか0.21%だった。大半の市町村が特定高齢者の把握は「困難」と答えた。

 「うつを除く20項目のうち12項目以上に該当」「運動機能について『転倒する不安が大きい』など5項目すべてに該当」といった要件をクリアしないと対象者の候補にも入れないためで、自治体からは厳しい要件に批判が続出。厚労省は、リストの質問項目は変えないものの、該当項目がこれまでより少なくても対象者候補になるよう緩和することにした。

 このほか、現在は特定高齢者の約6割は健康診断で把握されているが、健診を受けないお年寄りの中にこそ体力が落ちている人が多いと厚労省はみている。このため市町村には、介護相談をしている地域包括支援センターや医療関係団体、民生委員などと連携し、お年寄りの情報を集めるように求める。

 厚労省は「このままだと対象者が集まらず、制度本来の目的が達成できないと判断した。必要な見直しをして、新事業を一刻も早く軌道に乗せたい」としている。

http://www.asahi.com/life/update/0121/002.html