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2007年01月20日(土) 01時50分

1月20日付・編集手帳読売新聞

 一、十、百、千…から始まって万、億、兆、京(けい)…。どこのどなたが考えたのかは知らないが、数の位取りの名称は溝(こう)(10の32乗)や極(ごく)(10の48乗)を経て、無量大数(10の68乗)まで延々とつづく◆「無限」とは、さらにその先であろうから、気の遠くなる遥(はる)か彼方(かなた)である。「無限の可能性」や「無限の努力」ならばともかくも、「無限の細菌数」を社内の記録につづる神経とはいかなるものだろう◆不二家の札幌工場で製品から検出した細菌数を「無限」と記録して出荷していた事例のあったことが、保健所の調査で分かった。消費者が口に入れる品をあたかも細菌の塊であるかのように扱って疑問に感じないとは、不可思議(10の64乗)というほかはない◆細菌の数が検査基準を超えた製品を食べて、影響はどうか? 不祥事が明るみに出てから最初の記者会見(今月11日)で問われ、不二家側は答えている。「仮にあったとしても、体の弱い幼児がおなかをこわす程度…」である、と◆体の弱い幼児がおなかをこわせば夜も眠れないのが親である。身も細るのが親である。本社が本社ならば工場も工場、ということかも知れない◆小売店では不二家製品を撤去する動きが広がっている。信頼回復の道のりには、どれほどの棘(いばら)が横たわっているだろう。脳裏をかすめる二文字がある。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070119ig15.htm