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2007年01月20日(土) 00時00分

ドンキ放火 無期求刑  「真実話し 謝罪を」読売新聞

意見陳述 声詰まらす遺族ら

 2004年12月、さいたま市緑区のディスカウント店「ドン・キホーテ浦和花月店」が全焼し、従業員3人が死亡するなどした連続放火事件で、現住建造物等放火罪などに問われた同市中央区大戸、無職渡辺ノリ子被告(49)に対し、検察側は19日、無期懲役を求刑した。公判で一貫して起訴事実を否認してきた渡辺被告。検察側は状況証拠や目撃証言、放火を認めた捜査段階での供述を基に「犯人であることは明らか」と主張し、「危険極まりない犯行で余りに悲惨な結果を引き起こした」と指弾した。

 浦和花月店での放火事件について、検察側は、〈1〉発生時間の前後、火元の寝具売り場付近で渡辺被告らしき女性が複数の客や従業員に目撃されている〈2〉拘置中、同房の女性に「人が死ぬとは思わなかった。魔が差した」と話している〈3〉捜査段階で「灯油をしみ込ませたティッシュペーパーに火を付けた。どうにでもなれと思った」と供述している——ことを列挙。「寝具売り場に立ち寄って放火したことは明白」とした。

 他の6件の放火未遂事件についても、同様に目撃証言などを積み重ねて提示して、渡辺被告の犯行であると指摘。その上で、「自分の放火で3人が死亡したと知っても、わずか2日後に別の犯行に及んでおり、規範意識は鈍磨している」と厳しい口調で述べた。

 また、責任能力についても、「いらだちを解消したいという動機は短絡的だが理解可能で、放火する場所を選んでいたり、すぐに逃走したりしている」として、完全責任能力があるとした。

 この日の渡辺被告は、紺のジャージー上下を着て、サンダル履きで入廷。白髪が目立つ髪の毛は、肩を隠すくらいまで伸びていた。公判中、頻繁に傍聴席へ目線を移し、何かをつぶやく場面もあった。無期懲役を求刑されても、表情に変化はなかった。

 この日の公判では、論告に先立ち、浦和花月店の火災で死亡した大島守雄さん(当時39歳)、関口舞子さん(同19歳)、小石舞さん(同20歳)の遺族らが意見陳述で心境を述べた。

 大島さんの妹の礼江さん(38)は「兄がこんなかたちで命を落としてしまい、今でも寂しさで大泣きすることがある」と述べ、関口さんの父の広昭さん(51)は「手塩にかけて育てた娘が、19歳の若さで死んだことがまだ信じられない。なぜ殺人罪で起訴されなかったのか理解できない」と話した。小石さんの母の肇子さん(45)は「渡辺被告には、真実に目を向けて本当のことを話し、『ごめんなさい』と謝罪してほしい」と声を詰まらせた。

 公判後、遺族らは、報道陣の問いかけに「コメントできません」とだけ話し、足早に裁判所を後にした。 最終弁論は2月22日行われ、判決は3月23日に言い渡される予定。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/news001.htm