記事登録
2007年01月20日(土) 00時00分

3年服役男性 無実朝日新聞

足跡不一致のまま
 県警 別の容疑者を逮捕

 懲役3年の判決を受けて服役を終えた男性は「無実」だった——。県警は19日、強姦(ごう・かん)罪などで02年11月に実刑判決を受けた県内の男性(39)とは別の容疑者を逮捕したと発表した。現場に残された足跡が男性のものと違うという認識があっただけでなく、男性宅の電話の通信記録の調査が不十分なまま逮捕に踏み切っていた。逮捕から仮出所までに拘束された期間は2年9カ月。男性の親類は「きちんと調べてくれれば」と割り切れない思いを口にした。

 県警によると、02年1月中旬ごろ、県西部で女性が暴行され、同年3月中旬ごろにも県西部で、別の女性が暴行されそうになる事件が起きた。

 県警はこれらの事件について、似顔絵や被害者の証言などから男性を同年4月と5月に強姦や強姦未遂などの疑いで逮捕した。男性は同罪などで起訴され同年11月に懲役3年の実刑判決を受け服役。05年1月に仮出所した。

 だが、昨年8月、強制わいせつの疑いで鳥取県警に逮捕された大津英一容疑者(51)=松江市=が昨年11月中旬、富山県内の2事件について「自分がやった」と供述。県警が再捜査したところ、2事件の犯行現場にあった足跡が大津容疑者の足跡と一致したほか、男性宅の電話の通話時刻と犯行時間が近く男性の犯行は難しいことなどが分かったという。

 当時の取り調べについて、小林勉刑事部長は「威迫などはしていない。取り調べ方法は適切だったが、裏付け捜査が不十分で欠陥があったと言わざるを得ない」と話した。

 また、逮捕時に電話の通話記録でアリバイを検討しなかった点については「違う目的で通話記録に目を通しており、気が付かなかった」と弁明。現場の遺留物についてDNA鑑定などもしていないことを明らかにした。

 富山地検も同日、記者会見を開いた。佐野仁志次席検事は「振り返ってみると、男性を犯人と特定する客観的な証拠はなかった。吟味して精査すれば分かったことだった」と振り返った。

 また、男性を弁護した山口敏彦弁護士は「私も含め、もう少し事実関係を精査すべきだったと複雑な気持ちだ。当時、疑問に思うことはなかった」と話した。

 一方、男性の親類の60代女性は「おとなしい子だから逮捕されたときはまさかと思った。無実と言い切れなかったんだろう」と話す。釈放後まもなく男性が会いに来たとき、服役中に亡くなった父親の墓参りに行くと言っていたという。「とてもかわいそう。無罪になったなら堂々と生きていってほしい」と話した。

 子どものころから知っているという男性(84)に、逮捕前日「何もしていないのに疑いをかけられている」と言っていたという。

http://mytown.asahi.com/toyama/news.php?k_id=17000000701200003