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2007年01月19日(金) 00時00分

M&A弁護士仰天報酬! 阪神18億、王子10億…ZAKZAK

 【高い報酬】

 従来、企業法務の弁護士といえば、「顧問弁護士」のイメージがあったが、大買収時代に入って花形となったのは「渉外弁護士」だ。企業からの依頼を受け、M&Aなどの業務を手掛ける。

 「顧問弁護士のように毎月定額の顧問料を受け取るのではなく、大きな取引のたびにアドバイザーとして雇われる。その代わり報酬は高い。M&Aは、高報酬が約束される主戦場になっている」(法曹関係者)

 渉外弁護士のアドバイザーとしての報酬は、着手金や作業報酬、助言報酬といった基礎報酬のほかに、成功報酬がある。村上ファンドに株を買い占められた阪神電気鉄道がアドバイザーの証券会社と弁護士などに支払った助言料は約18億円と巨額。村上ファンドを撃退した成功報酬がプラスされ、額が膨らんだ。

 製紙業界の買収劇の主役だった王子製紙と北越製紙は、平成18年9月中間期にTOB関連費用として、それぞれ約10億円と約6億円の特別損失を計上した。アドバイザーとして雇った証券会社や弁護士事務所に対する費用が発生したからだ。その半分近くが弁護士の取り分となる。

 北越側についた渉外弁護士は、経済小説も執筆する才人として知られる牛島総合法律事務所の牛島信弁護士。同氏は昨年初めのドン・キホーテによるオリジン東秀に対する敵対的買収では、友好的買収者となったイオンに助言した。

 王子側についた藤縄憲一弁護士が所属する長島・大野・常松法律事務所は、国内最大級の法律事務所。王子の財務アドバイザーとなった野村証券の顧問である西村・ときわ法律事務所、北越の味方になった三菱商事側の森・濱田松本法律事務所などと並ぶ存在だ。

 王子による北越の買収劇には、ビッグ・ロー・ファーム(巨大法律事務所)が黒子として火花を散らした。

 【億単位の年収】

 1990年代後半の金融制度改革は、銀行や証券などの金融業に劇的な変化をもたらしたが、弁護士の世界も同じ。ビジネス法務に特化した法律事務所の合従連衡が一気に進み、渉外法律事務所は巨大化した。

 平成12年以降に始まった渉外法律事務所の再編は、200人以上の弁護士を抱える「ビッグ4」に集約されつつある。

 12年1月に、「常松・梁瀬・関根法律事務所」と「長島・大野法律事務所」が合併し、「長島・大野・常松法律事務所」になったのが始まり。昨年10月末現在、弁護士(外国人弁護士を含む)は261人を擁する。

 16年1月には、「西村総合法律事務所」と「ときわ総合法律事務所」が合併して「西村ときわ法律事務所」(弁護士239人)が誕生。さらに、17年には「アンダーセン・毛利・友常法律事務所」(同220人)と、「森・濱田松本法律事務所」(同220人)が生まれた。

 「ビッグ・ロー・ファームが出現したのは、M&Aなど法務ビジネス市場が拡大したため。大型M&Aなどの資産査定では、公認会計士と共同で作業にあたる弁護士が10人単位で必要で、ヘッドハンティングも活発だ。優秀な渉外弁護士は高報酬で引き抜かれるほどの人気となっている」(法曹関係者)

 入所1年の新米弁護士でも、M&Aチームに加われば、年収1000万円を超える。パートナーと呼ばれる事務所の共同経営者になれば、億単位の報酬が約束される。弁護士の中でも、とびきりの花形職業が渉外弁護士なのだ。

 米国のM&Aに詳しい大手銀行のアナリストによると、渉外弁護士がM&Aを仕切るようになるだろうという。

 「米国の大型買収は、投資銀行と弁護士の独壇場。取締役会までM&Aを知らされなかった取締役は珍しくない。双方のCEO(最高経営責任者)と弁護士の間ですべてを決め、ほかの取締役は蚊帳の外。弁護士の主導権のもとで進められるのが米国のM&Aの実態だ」

 大買収時代を迎え、脚光を浴びるM&A専門の渉外弁護士。最大のビジネスチャンスが訪れている。

ZAKZAK 2007/01/19

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_01/t2007011924.html