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2007年01月18日(木) 10時07分

国選弁護に「空白期間」 控訴し高裁に記録着くまで朝日新聞

 刑事裁判で国選弁護を受けた被告が控訴した場合、弁護人のいない「空白期間」が何カ月も生じるおそれがあることが裁判所の中で問題化している。地裁が訴訟記録を高裁に送るのに時間がかかっているのが原因の一つで、最高裁第一小法廷の才口千晴裁判官は特別抗告事件の決定で「記録をできるだけ速く送る実務の改善が急務だ」と指摘。最高裁刑事局も今月、全国の高裁・地裁に決定文を送り、注意を促した。

 弁護人は地裁、高裁など「審級」ごとに選ばれる。高裁の場合、地裁から記録が送られてから新しい弁護人を選ぶことになる。ところが現在、地裁のチェックを経て高裁に記録が送られるのは平均で1カ月程度、長ければ数カ月かかるという。

 また、地裁で選ばれた弁護人がいつまで資格を持つのかについては判例が確立されていない。

 こうした事情から、被告人にとっては、だれに相談すればよいのかわからない不安な状態が続いていた。

 決定は15日付の裁判所時報に載った。それによると、強姦(ごうかん)事件で無罪を主張したが実刑判決を受けた被告の今村憲弁護人が控訴後、検察に押収された物を返すよう東京地裁に準抗告。弁護人の申立書に被告本人の申立書も添えていたが、地裁は「被告の控訴で、(一審の)今村弁護士の選任の効力は失われており、申し立ては不適法」として形式的に棄却した。

 今村弁護人は「一審の弁護人は控訴審の弁護人が選ばれるまで、弁護人としての活動ができるはず。国選弁護人選任に相当期間を要するのは裁判所などの事務処理上の都合。それで被告が不利益を被るのは、資力のない被告にも弁護人選任権を保障した憲法に反する」と特別抗告した。

 決定は、5人全員一致で「形式的な処理をした地裁の決定には違法があり、取り消さなければ著しく正義に反する」と判断。審理を同地裁に差し戻した。

http://www.asahi.com/national/update/0117/TKY200701170447.html