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2007年01月18日(木) 22時47分

鹿児島県警の「踏み字強要」に賠償命令 鹿児島地裁朝日新聞

 03年にあった鹿児島県議選の公職選挙法違反事件に絡み、任意の事情聴取を受けた同県志布志市志布志町、ホテル経営川畑幸夫さん(61)が「県警の警部補(44)から家族の名前などを書いた紙を踏みつける『踏み字』を強要されるなど、違法な取り調べを受けた」として県に慰謝料など200万円を求めた訴訟の判決が18日、鹿児島地裁であった。高野裕裁判官は「取り調べ手法が常軌を逸し、公権力をかさに着て原告を侮辱する行為で、精神的苦痛は甚大」として、警部補を雇用している県に60万円の支払いを命じた。

 判決によると、警部補は03年4月中旬の3日間、支援する候補者への投票を依頼する目的で市内の建設業者にビールを配ったなどとして川畑さんを任意で取り調べた。この時、「早く正直なじいちゃんになって」などと家族からのメッセージに見立てた文言を勝手に3枚の紙に記し、川畑さんの両足首をつかんで踏ませた。

 県側は「反省を促すために、両足首を軽くつかみ、3枚のうち1枚の端の方に置いた」と主張したが、高野裁判官は「違法な有形力の行使であることは明らか。仮に1回でも、足先のみ紙にのせたとしても、違法性は十分認められる」と判断した。他に、任意の取り調べなのに自由を侵害するなどの違法行為があったことも認めた。

 川畑さんはこの事情聴取の後、同じ候補者をめぐる別の現金による買収容疑で逮捕されたが、不起訴になっている。一連の公選法違反事件では、候補者ら13人が起訴(1人は死亡で公訴棄却)されて公判中。12人の被告全員が川畑さんと同様、「違法な取り調べで自白を強要された」などと無罪を主張する極めて異例な展開になっている。

 この日の判決について、県警監察課の上永田政夫課長は「主張が認められず残念。判決内容を検討し、対応を決めたい」と話した。

http://www.asahi.com/national/update/0118/SEB200701180011.html