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2007年01月17日(水) 00時00分

第一生命 人気の特約 構造的欠陥読売新聞

「がん未告知」支払い放置

 第一生命保険で16日、新たな保険金の不払いが大量に発覚した背景には、三大疾病特約の保険金支払い方法に隠された構造的な「欠陥」を見抜けなかった事情がある。がん、脳卒中、心筋梗塞(こうそく)の三つの病気で入院した契約者に多額の保険金が支払われる特約の人気は高い。他の生保も取り扱っており、不払いが業界全体に飛び火する可能性もある。信頼回復を急ぐ保険業界にとって、頭の痛い問題がまた一つ浮かび上がった。

◆落とし穴

 三大疾病特約の保険金を受け取るには契約者の請求書と医師の診断書が必要だ。しかし、国内では、がんの告知率は「70〜90%」(第一生命)にとどまっており、契約者本人や家族が知らないケースがある。

 また、脳卒中や心筋梗塞の場合は、保険金を請求できるようになるには、2か月間程度、本人の病状がどうなるかを見極める経過期間が必要だ。この間に入院給付金などが支給されると契約者が「保険金はすでにもらった」と誤解するケースもあるという。

 保険会社は診断書で契約者がどんな病気にかかったかを知ることができる。しかし、第一生命は「契約者にそれを知らせることは、がんの場合などは事実上の告知となる」として、結果的に支払いを「放置」してきた格好だ。

 ただ、告知に関して他の多くの生保は「契約者本人が告知されていなくても、家族は告知を受けているケースがほとんどなので、支払いは可能だ」(外資系生保)と話している。

◆契約者保護

 契約者からの請求がなければ、会社は保険金を支払う必要はなく、請求するよう促す法的義務もない。

 しかし、保険会社もようやく対応に乗り出した。

 住友生命保険は昨年5月から従来は別々だった入院と特約の請求書を1枚にまとめ、保険金の請求漏れが起きにくい体制を整えた。

 第一生命は、昨年秋に冊子を作成して全契約者に配布し、契約者本人ががんを告知されていない場合でも、告知を受けた家族が代理人となって保険金を請求できる制度の活用を呼びかけている。

◆営業優先

 三大疾病は日本人の死亡原因の上位を占めるだけに、特約のニーズは高い。

 しかし、保険に詳しい全国消費生活相談員協会の丹野美絵子主任研究員は、「保険会社は、契約前に本人や家族にあらゆる可能性を説明し、そもそも『告知できない』事態を起こさないように努めるべきだ」と、営業優先の保険会社の体質を批判している。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20070117mh05.htm