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2007年01月17日(水) 00時00分

ソフトバンク危うい激安設定…債権者からブーイングZAKZAK

 【激安】

 「ホワイトプラン」と呼ばれる新料金プランは基本料が月額980円となっているほか、(1)ソフトバンクの契約者同士の通話は午前1時から午後9時まで無料(2)それ以外の時間帯や他社携帯との通話は30秒当たり21円−などとなっている。

 この基本料金は、同社が昨年10月下旬に投入した「ゴールドプラン」で提供した月額2880円(1月15日までの加入者対象)のほぼ3分の1。

 他社の基本的な料金プランと比べても激安ぶりは歴然で、NTTドコモの「タイプSS」、KDDI(au)の「プランSS」はともに3780円だから、約4分の1ということになる。

 利用者を増やすことに主眼を置き、「いま一番いいものを出していく」(広報部)のがソフトバンクモバイルの方針で、今回の激安の料金設定はベストの選択という。

 【意気込みとは裏腹】

 ただ、こうした意気込みとは裏腹に、同社の債権者である金融機関からはブーイングがわき起こっている。

 ソフトバンクは携帯事業に参入するに当たり、旧ボーダフォン日本法人を昨年4月に買収。その際、17の金融機関から約1兆1740億円を借りて買収資金に充てた。そして同12月、携帯電話事業の証券化という手法を使い、借金の借り換えを行った。

 借り換えには、みずほコーポレート銀行、シティグループ、ドイツ銀行など14の金融機関が参加し、ソフトバンクモバイルは約1兆4500億円を調達した。

 で、なんでブーイングが起きるかというと、この証券化の仕組みがかかわってくる。

 「証券化により、ソフトバンクは各金融機関への債務を携帯事業で稼ぎ出したキャッシュで返済することになる。ところが、こんなに安い料金を設定したら、当然、収益面で不安が出てくることになる」(証券化に関係した金融機関担当者)

 別の関係者も「『通話・メールともに0円』という衝撃的な料金プランを発表したときも、低価格競争戦略についてキツく文句を言ったのに、今回またやってきたのであぜんとした」と語る。

 業界関係者の間でも、収益面を問題視する向きがある。

 携帯ジャーナリストの石川温氏も「かなり安いプランなので加入数は増えると思うが、ユーザーが優良顧客になるかは疑問。無料通話の時間帯だけ徹底して使うツワモノが増えそうだ」と懸念する。

 証券化では、業績が計画よりも一定期間下回ると、金融機関が経営陣の交代の権限を持つなど条件が複数付けられているため、業績が振るわなければソフトバンクは窮地に陥ることになる。

 【苦しい現状】

 携帯電話会社を変えても電話番号が変わらない「番号継続制度」が昨年10月に実施されて以来、ソフトバンクは苦境が続いている。同11月をみると、他社からソフトバンクへの転入は9万3900件だったのに対し、他社に転出していったのは14万7800件。同12月は転入8万3300件に対し、転出が12万2900件。

 格安料金を打ち出してきた割には、他社への流出が続いている。

 電機通信事業者協会が今月11日に発表した昨年末の事業者別契約数をみても、ソフトバンクの累計は1549万6500件。NTTドコモの5221万3800件、KDDIの2722万5600件との差は歴然だ。

 「加入契約者を増やすことが至上命題なのは分かるが、ここまで安くすると命取りになりかねない」(兜町筋)

 ソフトバンクでは、収益面を不安視する金融機関の声に対し、「証券化といっても、経営の自由度は与えられている。借り手、貸し手のなかでしばられるものではない」(広報室)と強気の姿勢を見せている。

 利用者や業界を驚かす低料金プランを次々と打ち出してくるソフトバンクだが、それでも契約者の流出が止まらなければどうなるか。“危うさ”と隣り合わせの戦略といえそうだ。 

ZAKZAK 2007/01/17

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_01/t2007011729.html