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2007年01月16日(火) 00時00分

(10)「童貞連合」会員260人読売新聞


「ドラマのような恋愛をしたい」と話す全国童貞連合会長の渡部伸さん(中央)
「恋愛できなくても困らない」

 性体験のない男性でつくる「全国童貞連合」という会がある。メンバーは20〜30歳代を中心に現在約260人。

 ホームページには、〈黙っていたんじゃいつまでたっても女神は舞い降りてこないぞ。勇気を出して自分をアピールするのだ〉などと勇ましい言葉があふれている。

 会長の渡部伸さん(33)と、東京・赤坂で待ち合わせた。昼食を誘い、何を食べたいかを聞くと、「お任せします。自分で決められないんです」。

 広告デザイナーという、ある意味、華やかな世界で仕事をしている。人当たりもいい。だが、これまで一度も女性と付き合ったことがない。

 8年前、一つ年下の相手に初めて交際を申し込んだが、あっけなくふられた。直後に、友人数人と会を発足させ、ネットで同士を募ってきた。「一人だと内気なのですが、仲間が集まるとちょっとは強くなれるんです」

 年に1、2回懇親会を開く程度で特別な活動をしていないが、徐々に仲間が集まりだした。「自分と同じ境遇の人がたくさんいることがわかりびっくりしました」

 「電車男」や「40歳の童貞男」などテレビドラマや映画で恋愛に奮闘する童貞が取り上げられている影響からか、毎月10人近くが入会する。

 会の目標は童貞を卒業することで、毎月2、3人が退会していく。しかし、渡部さんは8年前の失恋から、新しい恋を一度もしていない。

 男同士だとちゃんとしゃべれるのに、女性と2人きりになると、過剰に意識して、何も話せなくなってしまう。デートに誘うことなどもってのほか。「もし、自分の行きたい場所を、相手が嫌だったらと考えると、自分から何も言い出すことができなくなってしまうんです」

 一方で、「恋愛をしなくていい」と開き直る人もいる。

 東京・八王子の男性(29)もその一人。「恋愛も、竹馬や逆上がりと同じ。できたら楽しいかもしれないけど、できなくたって何も困らない」と話す。現在は、ネットでの株取引で生活をしている。ルックスに自信がないからか、女性に交際を申し込んだことは一度もない。

 女性と交際するため、服などに投資しても見返りは期待できない。割に合わない投資はしたくないと考えている。

 「いまの社会は恋愛資本主義。恋愛が、モノを売るための大きな要因になっている。だから、恋愛ができないとダメな男というような風潮を社会がつくっている。でも、ぼくはだまされませんよ」

 40〜44歳の男性の7・9%が性交渉の経験がない。

 日本家族計画協会が2004年に性交渉の有無について行ったアンケート調査だ。無回答の5%を含めると、10人に1人が「未経験」だと推測できるという。

 同世代の女性の「未経験率」は0・6%(無回答1・4%)だった。

 同協会の北村邦夫常務理事は、男性のコミュニケーション能力の低下が原因とみる。「ふられたり、失敗したりして自分を傷つけたくない。だから、あえて女性を口説くこともしなくなる。性交渉に関しても、受験と同じで、常に成功しないといけないと思っている男性が多い」

 名古屋のNPO法人「花婿学校」。結婚できない男性を応援するため、2003年から、東京、大阪、名古屋で、服装や話し方に関するレッスンを開いている。

 代表の大橋清朗さん(37)は、数百人の受講生と接してきたが、どの世代にも共通する悩みは、女性と何を話していいかわからないということだ。だから、レッスンでは同じことを言い続けている。

 「傷ついてもいいじゃないですか、思い切って一歩踏み出してみてください」と。

未婚の壮年男性148万人 親と同居

 総務省の2006年の調査では、親と同居の未婚の壮年男性(35〜44歳)は、前年よりも約16万人増え約148万人。同年齢の6人に1人が、いわゆる「パラサイト・シングル」だ。同省では、「フリーターの増加など、経済的な理由で親との同居を選んでいる場合が多い」と分析する。

 また、国立社会保障・人口問題研究所の05年の調査では、18〜34歳の未婚男性の7割近くが、「婚約者や恋人はいない」と回答している。


http://www.yomiuri.co.jp/feature/otokogokoro/fe_ot_07011601.htm