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2007年01月16日(火) 14時42分

不二家支えたフランチャイズが悲鳴「裏切られた」読売新聞


ブラインドを降ろし、予約客以外への販売を中止した不二家飯田橋神楽坂店(東京・新宿区で)

 大手菓子メーカー「不二家」(本社・東京)が、消費期限切れの原材料を使った洋菓子を製造・出荷するなどしていた問題で、全店舗の約8割を占めるフランチャイズ(FC)店が苦悩を深めている。

 ほとんどの店が休業に追い込まれた中、15日に不二家の工場での組織ぐるみの不正が明らかになり、藤井林太郎社長も辞意を表明した。「本社に裏切られた」「営業再開はいつになるのか」——。不二家ブランドを支えてきた屋台骨が、揺れている。

 不二家は1963年にフランチャイズ制を導入した。今では不二家の店舗894店のうち、707店がFC店で、不二家製品の販売の中心的存在だ。だが、今回の不祥事でレストランなどを除く700店が休業。全休業店舗(797店)の9割近くを占める。

 休業に追い込まれた東京都内の男性店主(50)は、「不二家は、夢を売る会社なのにこんなことになってしまったとは」と嘆息する。親の代にFC契約を結んですでに38年。常連客も多く、「『幼いころ、誕生日に不二家のケーキを食べたなぁ』というお客さんの大事な思い出まで汚してしまった」と自分の責任のように感じている。休業した11日には洋菓子1000個以上を廃棄した。

 それでも、15日の社長辞任会見後、客から励ましの声をかけられた。不祥事発覚後、約20の個人や企業から受けていた誕生日ケーキの予約をキャンセルしてもらったが、「3人のお客さんと3つの企業は『お店が悪いんじゃない。営業再開まで待つよ』と言ってくれた。本当にありがたい」と語る。

 今、気になるのは不二家の対応だ。「今だったらお客さんも許してくれるかもしれないが、別な問題が見つかったら、次はもうない」

 東京都内の別のFC店。買い物客でにぎわう商店街で、ぽつんとシャッターを下ろしたままだ。FC店となって30年近くたつという男性店主(65)は、15日の会見を聞き、「これで営業再開も全くの白紙になってしまった。FC店に休業補償をするというが、不二家自体がどうなるか」と危機感を募らせる。

 大阪府内の男性店主(74)も、「不二家の店をやっている誇りも愛着もあるのに、裏切られた」と語る。商品はすべて回収され、やることは掃除ぐらい。「きっちりけじめはつけるべき。私たちもお客様に頭を下げることから再出発したい」と唇をかんだ。

 ペコちゃんの顔をかたどった大判焼き「ペコちゃん焼」を店独自で製造している飯田橋神楽坂店(東京都新宿区)では、不二家の洋菓子の製造中止後も、「ペコちゃん焼」だけは販売していた。だが、15日午後に閉店。長男(2)を連れて訪れた新宿区の主婦(34)は、「子どもが気に入っていたのに。早く復活してほしい」と残念そう。店の中をのぞき込んでいた長男は、寂しそうに言った。「ペコちゃんいなくなっちゃったよ……」

 16日も開店時間になっても店は開かず、入り口などに張られた「混乱を避けるため、一般の営業は中止します。予約の方のみ店内で商品をお渡しします」という張り紙を、通行人が眺めていた。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070116i4w6.htm