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2007年01月16日(火) 03時08分

製造ライン、うそ容認 不二家、詳細なお「調査中」朝日新聞

 食の安全を軽視した不正は、やはり「組織ぐるみ」だった。15日の記者会見で、製品の消費期限改ざんを工場関係者が広く知っていたことを認めた不二家。上司の指示で消費期限が切れた原料を使ったことも明るみに出た。明治の創業以来、消費者の信頼で培われてきた「老舗(しにせ)」の看板は、ずさんな仕事で泥にまみれた。

 「国民の皆様にご迷惑をかけ、誠に申し訳ございません」。15日午後3時。東京・銀座の不二家本社で開かれた記者会見は、藤井林太郎社長や生産管理担当幹部ら3人の謝罪から始まった。会見場となった本社7階の社員食堂は、入り切れない記者が通路にまで並ぶ。藤井社長が辞意を明らかにすると、一斉にフラッシュがたかれた。

 4日前の記者会見にも出席した藤井社長。その際、会社側は消費期限切れの牛乳を使った経緯をこう説明していた。

 定年後にパート社員として再雇用した元菓子職人の判断だった。ベテランの甘さがあった——。

 だが、この日の会見で、藤井社長は手元の資料に目を落としながら、埼玉工場で新たにわかった消費期限切れ牛乳や卵を使ったケース15件のうち「2件が上司の指示によるものとの報告がありました」と説明。個人の責任を強調していたのとは一転、工場ぐるみで期限切れ原料を使ったケースがあることを認めた。

 会社側は、消費者を驚かせる事実を次々と明らかにしていく。

 04年6月から06年10月にかけてプリンの消費期限を1日延ばして表示していたケースでは、工場長をはじめ、生産管理課長、製造課長、現場担当者ら関係者全員が、うその期限表示を容認していたという。

 また、前回の会見では、埼玉工場製造の「シューロール」の細菌検出量は国の基準の10倍だったとしていたのに、実際は64倍。出荷量も当初の説明の6倍だった。

 だが、細かくは語らなかった。会見は2時間半以上に及んだが、相次ぐ質問にも藤井社長らは「調査中」と繰り返すばかり。社内の食品衛生マニュアルの内容を問われても、品質管理の担当者が「手元に資料がないから、わからない」。「期限切れ原料の使用を指示した上司とは具体的にどんな役職なのか」とただされても「調べている」と答えるだけだった。

 不二家は全国の洋菓子工場の調査を続ける予定だ。だが、各工場では品質管理に必要な原材料や在庫の管理記録すら残っていないケースが目立つ。「聞き取り調査に頼っているのが実情です」。担当者はそう述べた。

http://www.asahi.com/national/update/0116/TKY200701150388.html