記事登録
2007年01月15日(月) 00時19分

ストレスに悩む中国駐在員増加 日中関係悪化も影響朝日新聞

 中国へ多くの日本企業が進出する中、現地滞在中に精神的なストレスに悩む日本人社員が増えている。想像以上に大きい異文化のギャップに加え、本社から求められる成果の重圧とともに、日中関係の悪化も背景にあると見られる。現地での医師不足から、精神科医のグループが会社を設立し、社員の相談や治療に乗り出すビジネスも現れた。

中国の在留邦人数の推移

 北京にある国際クリニック「VISTAクリニック」の精神科には、毎日、うつ病や適応障害に悩む各国の患者が訪れる。一番多いのが日本人で、全体の4割を占める。特に30〜40代の社員やその家族が目立ち、上海など、遠方からも受診に来るという。

 「不眠が続く」と昨年11月末、受診に来た30代の男性は中国に来て3カ月。中国人同僚との関係がうまくいかず、単身赴任で相談相手もいない。ストレスが原因と見られる。

 中国に詳しい精神科医らによると、要因として(1)同じアジアといっても、取引先と行うアルコール度の高い飲酒の習慣など、仕事の進め方や考え方が日本人と大きく異なる(2)現地の事情を知らない本社から、実現困難な業績を求められる(3)靖国問題など日中関係の悪化で経済活動が苦境に立たされた、などが挙げられるという。

 「以前なら、中国に配される社員は中国語ができる『中国専門家』だったが、今は現地にできた工場に派遣される『初心者』も多く、異文化のストレスで悩む人が増えているようだ」。北京を中心に約660の日系企業で組織する中国日本商会の五十嵐克也事務局長は、そう話す。 企業向けメンタルヘルスのコンサルティング会社「MDネット」(東京都中央区)は、海外に滞在する日本人社員に対し、精神科医がメールで定期診断や相談に応じるサービスを昨年10月から始めた。必要な場合は面談や治療を行い、現地の医師も紹介する。

 大手企業からの契約が相次ぎ、昨年12月現在で8社(駐在員とその家族約340人)。依頼の大半が中国からだという。精神科医でもある佐野秀典社長は「海外赴任のメンタルケアは、滞在期間だけでなく、渡航前と帰国後を含めた継続的なフォローが必要」と指摘する。

 海外在留邦人の心の問題に対して、医師間のネットワークづくりなどに取り組む「多文化間精神医学会」は、今年から中国での現地調査に乗りだし、現状や問題点を国に報告していく方針だ。

http://www.asahi.com/national/update/0113/TKY200701130330.html