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2007年01月14日(日) 01時51分

1月14日付・読売社説(2)読売新聞

 [不二家]「消費者の信頼を取り戻すには」

 ずさんな品質管理に隠蔽(いんぺい)とも受け取れる事後対応——。老舗の菓子メーカー「不二家」が、消費者の信頼を回復するのは容易なことではないだろう。

 埼玉工場で昨秋、消費期限切れの牛乳を使ったシュークリーム1万6000個を製造し、出荷していた。

 別の洋菓子からは国の規定の10倍もの細菌が検出されたが、そのまま出荷していた。賞味期限の切れた加工品でアップルパイも作っていた。

 食品企業にとって、品質管理は生命線だ。そこにこれほどのルール違反があったとなると、「うっかりミス」では通るまい。企業体質そのものが疑われる。消費者の健康被害が報告されていないからといって免責される問題ではない。

 少子化に伴う消費の伸び悩みや、輸入菓子の攻勢などで、洋菓子業界は業績が低迷している。不二家の洋菓子部門も2003年3月期から営業赤字が続く。

 コスト削減が重圧となり、生産現場で安全性への対応が後回しにされていたのではないか。コンプライアンス(法令順守)体制の不備も指摘されよう。

 さらに問題なのが、報道で発覚するまで、不二家が一連の不祥事を公表しなかったことだ。

 「マスコミに漏れた時点で経営危機、経営破綻(はたん)は免れない」「発覚すれば雪印乳業の二の舞いとなる」。社内調査グループによって、そんな内部資料が作成され、社長らに報告されていた。

 これは“隠蔽の勧め”ではないのか。藤井林太郎社長は「そういうことは一切ない。事実の把握と改善を優先した」と釈明するが、説得力はない。

 すぐに事実を公表し、消費者に注意を呼びかけるべきだった。安全性が確認されるまで、関連商品を回収し販売休止にするくらいの対応があってよかった。

 雪印は、集団食中毒発生を把握しながら公表・回収を1日遅らせたため被害を拡大させた。消費者の批判が集中し、その後グループは解体に追い込まれた。

 製品の安全性を軽視した対応の先延ばし、隠蔽体質が企業の存続を危うくする。雪印の教訓は生かされなかった。

 食品企業に対する行政のチェック機能の点検も必要だ。不二家の札幌工場では製造記録台帳に原材料仕入れ日の記載がないなど不備があったが、過去の保健所の立ち入りでは見過ごしていた。

 小売店の営業休止がいつまで続くのか不透明だ。百貨店などに洋菓子以外の不二家製品を撤去する動きも出てきた。

 今からでも、徹底した真相解明と再発防止策を講じ、消費者の理解を得ることだ。信頼の回復に即効薬はない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070113ig91.htm