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2007年01月14日(日) 00時00分

突然、完済請求「困った」 貸金業規制法改正思わぬ余波河北新報

 上限金利の引き下げを柱とした貸金業規制の改正法が成立したことで、廃業する消費者金融が続出する事態が想定され、東北でも思わぬ余波を懸念する声が広がっている。廃業した業者から債権譲渡を受けた業者が一括回収に乗り出すケースが表面化しているからだ。多重債務問題の改善など消費者保護という法改正の目的に逆行し、業者の都合で突然、返済計画が狂い、資金繰りに苦しむ悪循環を招きかねず、金融庁はトラブル回避に向けて債権譲渡の実態把握に乗り出した。

 宮城県貸金業協会(仙台市)には、昨年11月に廃業した京都市の中堅消費者金融について、10件以上相談が寄せられている。

 廃業の通知がないまま、債権譲渡を受けた業者から一括返済を求められ、「急にまとまった金はつくれない」と困惑している人もいるという。

 債権回収業は債権管理回収業に関する特別措置法に基づき、国の許可が必要。取り立ては貸金業者と同じく貸金業規制法の規制を受けるが、返済の期限や方法は各社の判断に委ねられる。過去に返済が遅れたことのある場合、不良債権化する恐れがあるとみなされ、早期完済を求められる可能性がある。

 協会の相談例でも、返済遅延と他社からの借り入れのある人が、一括返済の対象になっているという。

 業者が廃業すると、利用者はその業者が設定した借入限度枠を使えなくなる。「運転資金などを工面するため、短期間の利用を繰り返してきた。枠が突然なくなると、つなぎ資金の融通に困る。融資審査が厳しく、別業者への借り換えも難しい」(仙台市の自営業者)と事業主などへのしわ寄せも懸念されている。

 貸金業者の多くは、金利引き下げで収益低下が避けられない。すでに廃業を決めた業者もあり、「店舗数は今の3分の1程度に減るだろう」(業界関係者)とまで言われる。業界では廃業増で債権回収ビジネスが拡大すると予想されている。

 金融庁は昨年11月、貸金業者に対し、廃業時の債権の保有状況や回収方針などの届け出を新たに義務付けた。従来は廃業届けを提出するだけだったが、同庁は「廃業後、業者と連絡が取れなくなることもある。債権譲渡の実態を報告させることで、回収をめぐるトラブルを抑止する効果が見込める」と説明している。

[貸金業規制の改正法]2006年12月成立。09年末をめどに、出資法の上限金利(年29.2%)を利息制限法と同水準の年20%に引き下げる。借り手の年収の3分の1を上回る融資を原則禁止する総量規制も導入し、違反業者への罰則を設けた。ヤミ金融への刑事罰も最高で懲役5年から10年に引き上げる。

http://www.kahoku.co.jp/news/2007/01/20070115t73018.htm