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2007年01月14日(日) 20時45分

「加勢に行きたくても動けない」 鳥インフルで地元業者朝日新聞

 宮崎県清武町の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した鶏が大量死した問題で、この養鶏場を中心とする半径10キロの16養鶏場は鶏や卵の移動が禁止された。が、風評被害や「飛び火」を心配する声は、圏外にある養鶏業者や県外の取引先にも拡大している。

 「加勢に行きたくても、伝染の恐れがあるので動けない」。同県都城市で養鶏会社を営む柳田温清(はるきよ)さん(76)は、10キロ圏内にある養鶏場業者も加わる県養鶏農業協同組合の組合長も務める。最も懸念するのは風評被害だ。

 鹿児島県に接する都城市は、04年度の農業産出額ランキング(農林水産省調べ)によると、市町村別のブロイラーの産出額が全国一(旧市町の合算)。自身の会社も同市や鹿児島県で約200万羽を飼育し、1日に約150万個の卵を出荷する。

 今のところ出荷は通常通りだが、「キャンセルが出ればお手上げ。倒産など大事にもなりかねない」と心配する。今月末に予定していた業者同士の打ち合わせなど数件の会合は、感染の恐れを考え、無期延期にした。

 発生現場から南へ約30キロの日南市は、県がブランド化を目指す地鶏「みやざき地頭鶏(じとっこ)」の飼育に力を入れてきた。柔らかい肉質やコクのある味わいが評判を呼び、3月からは年間4万羽から10万羽へと量産体制が整う。

 地頭鶏は放し飼いのため感染が心配されるが、免疫も強いとされる。それでも市は飼育農家10戸に防鳥ネットの設置や関係者以外の立ち入りの禁止、鶏舎内の消毒の徹底を呼びかけている。

 飼育農家でつくる「地頭鶏ランド日南」の松浦由光社長は「飛び火が一番怖い」。ハトやスズメなどを追い払うため、多い日は花火を10回以上打ち上げているという。

 大分県内のある業者は、10キロ圏内にある宮崎の業者と取引があった。「取引はしばらくやめることになる」とみている。

 大分県では04年、ペットのチャボが鳥インフルエンザで死んだ。今回も各養鶏場への県の調査が始まっているという。宮崎の感染ルートはまだはっきりしないが、野鳥を経由してウイルスが運ばれた疑いが浮上している。「鳥インフルエンザはどこで発生してもおかしくないし、こっちもピリピリしている。ひとごとじゃない。感染ルートを早く見つけてほしい」

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 九州農政局(熊本市)は14日、風評被害につながりかねない不適切な店頭表示の実態を発表した。九州7県の計447小売店のうち34店で「清武町産ではない」「清武町より40〜50キロメートル離れています」などの表示がされていた。口頭で撤去・修正を求め、対応検討中の1店を除き33店が応じた。内訳は宮崎20店、大分6店、福岡5店、佐賀、鹿児島が各1店。同農政局は「鶏肉や鶏卵の摂取による鳥インフルエンザの人への感染は例がない」と冷静な対応を呼びかけており、今後も表示調査を続ける。

http://www.asahi.com/national/update/0114/SEB200701140009.html