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2007年01月13日(土) 01時08分

キヤノン、SEDを単独生産 東芝との合弁解消朝日新聞

 キヤノンと東芝は12日、兵庫県に着工予定だった次世代薄型テレビ向けのSED(表面電界ディスプレー)パネルの共同量産工場の建設計画を白紙撤回すると正式発表した。関連技術を持つ米社との特許訴訟が難航しているためだ。キヤノンは東芝との合弁会社を完全子会社化し、単独生産に切り替えることで問題の早期解決を狙うが、着工目前での計画変更に、投資を期待した地元では戸惑いの声も広がった。

SEDをめぐる主な経緯

国内最大の家電・IT見本市ではキヤノンと東芝のSED展示ブースに注目が集まった=昨年10月、千葉・幕張メッセのCEATEC会場で

 キヤノンが完全子会社化するのは、東芝と折半出資で設立した「SED」(神奈川県平塚市)。キヤノンは米ナノテク会社から関連技術の供与を受ける契約を結んでいるが、SED社がライセンスを移せるキヤノンの子会社に当たるかどうかで訴訟に発展。29日付で東芝の全保有株を約100億円で買い取り、訴訟の早期解決を優先させることにした。

 これでSEDパネルの生産は完全にキヤノン主導になる。両社の合弁契約は打ち切られるため、東芝の姫路工場内に約2000億円を投じる量産工場の新設計画は、いったん白紙撤回せざるを得なくなった。

 背景には、訴訟が解決しても、東芝がパネル調達する際に、米社が別途ライセンス料の支払いを求める姿勢を崩さないことも大きいとみられる。

 とはいえ、東芝はSED社社長を兼務する同社常務をキヤノンに転籍させ、引き続きSED社社長とするなど事業化に協力する方針だ。キヤノンも、米社との折り合いがつけば、東芝から姫路工場の用地を借りるなどして量産の道を探る可能性も残っている。

 SED社の平塚工場でもパネルを少量生産できる。東芝はSED社からパネルを購入し、SEDテレビを07年末までに国内発売する計画は変更しないという。

 だが、08年初めにも見込まれた量産計画の見直しで、SEDテレビの本格販売の遅れは必至。ライバルの液晶・プラズマテレビがしのぎを削る薄型テレビは価格下落が進んでおり、量産できないことでコスト競争力がそがれるのは痛手だ。

 計画の白紙化で工場建設予定地への影響も深刻だ。姫路工場があり、周辺市町と合併せずに雇用や税収などの経済効果に期待していた太子町の首藤正弘町長は「財政運営がしやすくなり、地域の活性化にもなると思っていたのに」と落胆していた。

http://www.asahi.com/business/update/0113/001.html