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2007年01月13日(土) 00時00分

不二家 ペコちゃんが泣いてる 東京新聞

 大手菓子メーカー不二家の不祥事は日常製品だけでなく「食の安全」も危うい状況にあることを見せつけた。利益を優先し消費者の信頼を裏切った経営陣は早急に責任を明確にする必要がある。

 今回は運がよかったと言うべきだろう。同社は昨秋以降、消費期限切れの牛乳を使ったシュークリームを大量に製造し販売した。また食品衛生法の基準を十倍も超える細菌が検出されたシューロールも販売されたが、食中毒などの被害は出ていないという。

 同社が公表した事実はあきれるばかりだ。主力の埼玉工場(埼玉県新座市)は長い間、期限切れ牛乳の使用を繰り返していた。賞味期限切れのりんごを使ったり、消費期限を長く表示したプリンもあった。

 そうした背景として少子化や新規参入企業との競争激化による赤字続きの洋菓子事業を「本年度は黒字化を目指していた」と社長は述べた。一番大切にすべきだった消費者のための視点がまったくなかった。

 埼玉県は緊急に立ち入り検査したが、同工場では原料の管理や製造した記録を作成していなかったことが判明した。県は安全管理体制が確立されるまで製造を再開しないよう指導した。当然だ。従業員の再教育を含め万全の管理体制が確認できるまでは操業を認めてはならない。

 救い難いのは社内調査でこうした問題を把握しながら、文書で「発覚すれば雪印乳業の二の舞いは避けられない」と“隠ぺい”しようとした疑いがあることだ。ここでも不良品を公表し回収する姿勢がなかった。

 七年前に発生した雪印乳業の集団食中毒事故は、停電で原料の脱脂粉乳に黄色ブドウ球菌が増殖し毒素が発生したことが原因だった。二年後に子会社が牛肉偽装事件を起こしたこともあって、同社は従業員削減など厳しい再建を迫られた。

 食品企業ではなによりも品質管理こそ命であるという雪印乳業の教訓を不二家は学んでいなかった。同族経営で組織の緩みが指摘されているが安全は守らなければならない。

 今回の不祥事はガス瞬間湯沸かし器など日常製品と同様、日本の「ものづくり」弱体化の一例である。不二家は一九一〇年創業の老舗だ。人気キャラクターと外食レストランなどの展開で成長してきた。だがそうした成功体験が慣れと無責任さを広げることになったのではないか。

 子どもたちは悲しんでいる。春先は洋菓子の需要が高まる。おいしくて安心して食べられるお菓子を作るため、早急に再発防止策を決め実行しなければならない。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20070113/col_____sha_____003.shtml