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2007年01月13日(土) 00時00分

鳥インフル疑惑「宮崎産 敬遠怖い」朝日新聞

  清武町で鳥インフルエンザの疑いが浮上してから一夜が明けた県内では12日、関係者たちが対応に追われた。対策本部を立ち上げた県は説明会を開いて対策を説明したが、全国一のブロイラー産地を誇る県内の業界関係者からは、風評被害に対する懸念が聞かれた。問い合わせが殺到した業者もある。飲食店や小売店では、消費者に配慮する動きも見られた。

  清武町は11日午後3時過ぎ、県宮崎家畜保健衛生所から鳥インフルエンザの疑いがある事例が発生したとの情報を受けた。同夜、「鳥インフルエンザが疑われる事例対策本部」を庁舎3階に設置。県の要請により、発生場所の養鶏所の周囲300メートルを立ち入り禁止にした。40人以上の態勢で情報収集や問い合わせの対応にあたっている。

  12日午前には町内の区長や町議、近くの福祉施設関係者らを集めた説明会を開き、一ノ瀬良尚町長が経緯を説明した。検査結果が確定し次第、正式な対策本部を設置するとしている。

  一ノ瀬町長は「報道などを見ていると非常にクロに近い」と話し、鳥インフルエンザと確定した時のために作業班を立ち上げる方針だ。

  対策本部は同日午後、各区長を通じて全町民に鳥インフルエンザへの対応についての文書を配布した。鶏肉や卵を食べて人に感染した事例はないこと、人への感染の可能性は極めて低いことなどを周知し、鳥が死んでいるのを見つけた時の対処法などを記した。

  役場の入り口には手洗い用の消毒液と、靴の裏の泥を落とすための容器が用意された。

  県も対応に追われた。鳥インフルエンザの防疫を担当する畜産課には12日早朝から、報道などで清武町の養鶏場での鶏の大量死を知った他県の畜産担当者や養鶏関係団体などから、詳細な状況を問い合わせる電話が相次ぎ、徹夜で待機していた職員らが応対した。

  午後3時半からは鳥インフルエンザの対策連絡会議を開き、「県高病原性鳥インフルエンザ対策本部」(本部長・坂佳代子副知事)を立ち上げた。福祉保健部は人への感染対策、環境森林部は野鳥の調査など、各部局が連携して対策にあたることを確認した。

  児湯郡にある養鶏業者には早朝から取引先約100社から問い合わせの電話が鳴り続け、従業員約15人で対応に追われた。鶏が大量死した清武町の業者からは10キロ以上離れていることなどを説明すると、「証明書を出してくれ」「発症していないという証明をしてくれ」などの申し出が相次いだ。

  経営者の男性(39)は「何より風評被害が怖い。顧客に丁寧に説明するしかない。今はどうしようもない」と困惑して話した。

  宮崎市内の養鶏業者(57)の鶏舎には、取引業者ら訪れる関係者もまばらだ。「感染拡大を防ぐには、鶏舎の出入りを極力控えるのが一番。業界関係者は心得ている」と話す。午前中に餌の搬入にやって来たトラックは、屋根の上まで消毒液をまいた。

  行政からの情報提供は、午前に市から大量死の発生を知らせる電話があっただけ。「移動制限区域の外の業者にもこまめな情報を知らせてほしい」と漏らす。取引先からは「おたくは大丈夫か」という問い合わせの電話が1件あっただけ。「知識がある関係者は冷静だが、一般の消費者が宮崎産を敬遠するのが怖い」と話した

  宮崎市の24時間営業のスーパー「マックスバリュ宮崎駅東店」では12日朝、「鳥インフルエンザの疑いが報道されており、生肉は消費者が敬遠するだろう」と陳列棚から鶏刺しを撤去した。

  担当者は「今後、売れ行きに影響が出ると思う。今は疑いの段階なので張り紙などはしていない。客の問い合わせには、産地証明書があることや鹿児島県産を店頭に並べていることなどを説明していく」と話した。

  県内にスーパー8店舗を展開する「ハットリー」は、「○○県産」としていた生産地表示を、より詳しい地域名や生産農場まで明記するように変えた。

  担当者は「表示を明確にすることで安心して購入してもらえる。午前中の客の反応を見ていると、影響は出ていないと思う」と話した。

http://mytown.asahi.com/miyazaki/news.php?k_id=46000000701130002