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2007年01月13日(土) 14時29分

違法派遣、会社ぐるみ?/フルキャスト朝日新聞

 楽天の本拠地の命名権(ネーミングライツ)を取得したことで知られる人材派遣大手の「フルキャスト」が12日、労働者派遣法違反の容疑で県警の捜索を受けた。禁じられた警備業務にスタッフを派遣した疑いが持たれている。県警は、フルキャストの東京都渋谷区の本社が直接、派遣先の警備会社と包括的な契約を結んでいたことをうかがわせる資料をすでに押収。違法な派遣を本社が認識していたかどうかを調べる。

 12日午前10時、県警の捜査員10人が、JR渋谷駅に隣接してそびえる23階建てのオフィスビル「渋谷マークシティウエスト」の13階にあるフルキャスト本社に、段ボールを持って捜索に入った。

 始業直後の社内では、捜査員の姿を目にした従業員から「何だこれ」と驚きの声が上がった。捜索は夜まで続いた。

 労働者派遣法は、専門知識が必要などの理由から、港湾運送や建設、警備の業務への人材派遣を禁じている。違反して役員や法人が罰金以上の刑を受けると、厚労相による派遣業の許可を失う可能性もある。

 調べでは、フルキャストが昨年10月に警備会社に派遣したアルバイト数人は、同市泉区のスーパーマーケットの駐車場で、出入りする車の交通整理をしていたという。

 フルキャストと警備会社の間で交わされた契約書では、業務内容は警備ではなく、買い物カートの整理などとされていたという。

 このスーパーの担当者は「警備を頼んだ日は特売日で、店全体が忙しかった。警備の様子までは見ておらず、どのような立場の人が来ているのかは分からなかった」と振り返る。

 両社は2年ほど前から取引を始めており、ほかにも違法な派遣が常態化していた疑いもある。調べに対し、警備会社の東北支社の社員は「違法と知りつつ派遣スタッフに交通整理をさせた」と供述しているという。

 県警は昨年秋の警備会社への捜索で、両社の本社同士が直接、包括契約を結んでいたことをうかがわせる資料を押収。フルキャスト本社の関与を調べるために、今回の捜索に踏み切ったという。

 県警は、フルキャストと警備会社の営利目的のほかに、警備員の需要の飛躍的な増加が背景にあったとみている。

 警察庁によると、全国の警備業者の05年の総売上高は約3兆5469億円。国民の安全安心への意識の高まりとともに、5年間で5割近くの急激な伸びを見せている。

 これに伴い、05年に改正警備業法が施行され、業者に交通整理といった業務ごとに教育責任者の設置を義務付けるなど規制が強化された。だが、今回派遣されたスタッフには何の教育も施されていなかったとされる。

 全国警備業協会(東京都)は「警備業者同士が融通し合う形での違法な派遣はまれに報告されているものの、今回のようなケースは把握していない」としている。

 一方、日本人材派遣協会(東京都)は「警備業務に派遣できないことは派遣業者にとって『イロハのイ』。大手の派遣会社が知らないはずはなく、事実とすれば違法性を認識していたとしか考えられない」と話した。

http://mytown.asahi.com/miyagi/news.php?k_id=04000000701120006