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2007年01月12日(金) 00時00分

年収・年齢別 PR3分読売新聞

活況 お見合いパーティー

 チリン、チリン。「時間です。隣の席に移動して下さい」

 師走の土曜午後、東京・新宿駅近くにある雑居ビルの一室。20〜30歳代の男女約50人が、2列に並んだテーブルで向かい合い、ベルの音を合図に、自己PRを繰り返していた。同じ相手と対面するのは、わずか3分。大手のパーティー企画会社が主催する「お見合いパーティー」の光景だ。

 この会社はほぼ連日、全国56都市でこうしたパーティーを開催している。昨年の参加者は前年より2割増の約30万人に迫る勢いだ。「26〜38歳くらい 年収600万円以上」「28〜40歳くらい 年収1000万円以上」。人気の秘訣(ひけつ)は、男性の収入や年齢を細かく分けるコース設定だ。同業者は全国にも多い。

 「今の幸せは、出会いがあったからこそ」

 茨城県内の会社員男性(29)と、コンビニで働く女性(31)は昨年9月、お見合いパーティーで知り合った。

 女性は5年前に離婚し、6歳の息子がいる。知人などを頼って再婚しようとしたが、「バツイチ、子持ち」がネックとなり、相手が見つからない。事情を隠して、パーティーに出かけた。

 男性は大阪出身。就職して茨城に赴任したが、なじみのない土地で女性の知人が全くいなかった。職場も男性ばかり。「このままでは出会いがない」と考えた。

 互いに第一印象が良く、1週間後に初デート。事実を告白した女性に、男性は「断ろう」とも思ったが、「付き合って、損はさせないから」と笑う女性の明るさにひかれた。

 今秋に結婚する。「きっかけをくれたパーティーに感謝しています」

 ◆「知らないから傷つかない」

 「若者向けのパーティーは難しい」。都内のあるパーティー企画業者は、こんなシーンを繰り返し目にしている。相手の話を聞かずに自分のことばかり話す男性。好みの女性には積極的なのに、そうでない女性には、「はあ」としか答えない男性。興味がない話題になるとそっぽを向く女性……。


都内で行われたお見合いパーティー。対面した女性と3分以内に会話をし、ベルが鳴ったら男性が席をひとつずらす

 中高年のパーティーも手がける関西地方の結婚相談所の担当者は、「中高年だと会話も弾むが、若者の場合は静まり返ることがしばしばある」と明かす。中には、3分の持ち時間のうち、最初に「こんにちは」とあいさつしたまま、黙り込んでしまう男性もいる。

 こうした「出会い以前の問題」(業者)について、恋愛事情に詳しいノンフィクション作家の白河桃子さん(45)は、「大切に育てられた今の男の子は、繊細で傷つくのが怖く、自分から人間関係を作ろうとする意識と能力が低い」と分析する。一方の女性は、結婚の必要性が低くなって男性を見る目が厳しくなり、外見や収入などだけで早めに見極める傾向があるという。

 昨年夏には、大阪府内の無職の男が、パーティーで知り合った女性を5か月余りにわたって監禁した事件も発覚した。別の業者は「免許証などでの身元確認は欠かさない」と安全性のアピールに躍起だ。

 新宿の雑居ビルで成立したカップルは4組。40人余りは“空振り”に終わった。相手が見つからなかった男性会社員(29)は、「互いを知らないまま選ぶから、ふられても傷つかない」とサラリと話した。

 未婚化、晩婚化が進む中、ときめきの仲介に商機を見いだす業界。出会いは確かに生まれているが、とらえどころのない若者事情に、試行錯誤は続く。

 「暇だから行っただけ。人を好きになるのは難しいし、このまま1人でもいい」。あるパーティーに2回参加したという埼玉県の女性会社員(31)は、投げやりに語った。

交際中の異性 「いない」半数

 国立社会保障・人口問題研究所が、18〜34歳の独身男女を対象にまとめた調査(2005年)では、男女の約半数が「交際している異性はいない」と回答した。8年前より、男は2・4ポイント、女は2・8ポイント上昇している。

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/rensai/20070106ok02.htm