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2007年01月12日(金) 13時33分

同業者「風評」にピリピリ 宮崎の鳥インフルエンザ朝日新聞

 鳥インフルエンザの疑いで養鶏場に被害が出た宮崎県では、同業者の間に不安が広がっている。

 鶏が大量死した清武町の養鶏場から約200メートルのところに住む農業の男性(71)は12日早朝、自宅に来た町職員から鳥インフルエンザの疑いを知らされた。畑まで鶏舎からのふんのにおいが漂う時もあるという。「とにかく驚いた。不安もあるが、どうにもならない」

 この養鶏場から約10キロ離れた宮崎市の養鶏業者(57)は同日朝、テレビのニュースで鶏の大量死を知った。従業員4人とともに、約1万5000羽を飼う鶏舎周辺にアルカリ性で殺菌効果のある石灰をまいた。

 この業者は「移動自粛の地域には入ってないと思う」と話し、午後から通常通り約1万個の卵を出荷する予定。だが、「『宮崎産』というだけで売れ行きが落ちるのが怖い」と風評被害への不安を漏らした。

 宮崎県や熊本県に加工場や孵卵(ふらん)場を設け、年間約5000万羽を扱っている大手養鶏会社・児湯食鳥(宮崎県川南町)は「鳥インフルエンザはどの業者も死活問題。今回鶏が大量死した業者も真剣に取り組んでいたと思うが、ウイルスは目に見えないものだから」と悩ましげだ。

 一方、地元の小売りや外食業界は冷静だ。「食品からの感染はない」とされていることから、宮崎産の扱いを見合わせるなどの過剰な反応は避けられている。

 04年に山口県で発生した際には、一部小売店が同県産の鶏卵や鶏肉を撤去したり、「山口産は扱っていません」と表示したりした。「今回はそれも反省材料にもなり、慎重な対応を心がける」(スーパー)という。

 九州農政局は、消費者らに誤解や不安が広がるのを防ぐため、関係団体などへの情報提供を始めた。「鶏肉や鶏卵を食べても人に感染しない。風評被害を防ぐためにも冷静に対応を」と要望。飲食店などで「宮崎県産は扱っていません」といった表示が出ないかなども調査する予定だ。

http://www.asahi.com/life/update/0112/004.html