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2007年01月12日(金) 00時00分

千原ジュニアの苦難救った「想像力」朝日新聞

 中学時代に引きこもり、進学した高校にも通わなかったお笑いコンビ、千原兄弟の千原ジュニア(32)が11日、悩める少年に「想像力」の重要性を説いた。ジュニアは15日に、自伝小説「14歳」(講談社、1470円)を発売する。パジャマ姿で過ごした日々や、肝炎やバイク事故などを乗り越えられたのは、窮地の先を生きる自分を想像したからだった。

 妹を兄が、夫を妻が…新年早々、家族による殺人事件が続く。シュールな芸風で、個性派芸人として活躍する千原兄弟の弟、千原ジュニアは引きこもっていた中学時代、ふと、将来を想像した日を思い出していた。

 「部屋にまだコンピューターがなかったから、テレビ見て、漫画読んで、部屋でひざ抱えて考えて。あと4年で働いて、彼女できて、おいしいもん食べて…。おれもなりたい、って想像した。こんなとこで、死んでる場合やないでって!」。

 ジュニアには、3回の危機があった。そのたびに兄靖史(36)や仲間が想像力を駆り立てた。

 ◆14歳で引きこもり 外界へのあこがれをかき立てたものの、肝心の1歩が踏み出せない。数カ月も同じパジャマで過ごしていた少年を救ったのは兄だった。「靖史は友だち、よう連れてきた。隣の部屋で楽しそうな声聞いてた」。その声に引っ張り出された。そして、兄に誘われるまま15歳でコンビを結成した。もう、パジャマ姿の自分は想像しなかった。

 ◆20歳で肝炎 ダウンタウンを輩出した心斎橋筋2丁目劇場で、絶大な人気を誇った。顔色の悪さを指摘され、病院へ行くと即入院。「目覚めたら4日くらいたってた。テレビ見てたら、靖史がおもろない。はよ戻らなあかんと思った」。再びステージに立ち、面白さを取り戻した兄を想像した。

 ◆27歳バイク事故で顔面骨折 「完全に終わった、と。意識戻ってすぐ『鏡見せてくれ』と。顔ない…ぐちゃぐちゃ。全治2年って? 絶対、無理って」。自暴自棄になっていると松本人志らが見舞いに来た。「激励の言葉なんてない。ただ、ベッドの周りで、おもろいことしゃべり倒してるだけ。聞いてると『おれもこっちの世界へ戻りたい』と、すごく思った」。全治2年のはずが半年で復帰した。

 「そもそも、もし14歳の時にコンピューターあったら、まだ部屋にいたかも…」。機械に任せず、自分で考えることこそ「想像力を育てよう」の意味だ。1歩踏み出した自分の姿が、救ってくれる。経験したからそう言える。


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