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2007年01月12日(金) 00時00分

強姦で実刑の18歳 犯行前、児相に相談朝日新聞

  強姦(ごうかん)罪などに問われ、横浜地裁で11日に懲役3年以上6年以下(求刑懲役5年以上7年以下)の判決を受けた横浜市内の無職少年(18)が犯行の約3カ月前、「小さな子への性的衝動を自分では止められない」と横浜市の児童相談所に相談していたことが分かった。少年はその後、自分の力で問題を解決しようとしたが、事件を起こしてしまった。

(三輪さち子、岩波精)

  判決などによると、少年は昨年8月、横浜市内で一緒に遊んでいた6歳の女児の下半身を触り、約7時間後、15歳の少女を強姦した。少年は翌日、県警に緊急逮捕された。横浜家裁は「刑事処分相当」として検察官送致し、強姦罪と強制わいせつ罪で起訴された。

  関係者によると、少年は04年、性犯罪を目的とした事件で少年院送致となり、約1年4カ月間入院。昨年4月に退院し、事件を起こした当時は保護観察中だった。

  少年が事件を起こす前に児童相談所や警察署に相談していたことが明らかにされたのは、昨年12月の初公判のときだった。弁護人から相談した理由を問われた少年は「もう、被害者を出したくなかった。どうすれば治るか知りたかった」などと答えていた。

  関係者によると、少年は昨年5月下旬、相談所内で児童精神科医と面談し、「小さな子への性的衝動を自分では止められない。自分を抑えられない。また罪を犯してしまうかも知れない」などと語った。この際、小学2〜3年生のときに同居していた元の継父から、母親が気づかないところで性的虐待を受けたことも打ち明けたという。

  相談所はその後、少年に電話をして来所を促したが、「二つの仕事を掛け持っていて忙しい」と姿を見せず、関係は途切れてしまったという。相談所の幹部は「関係が続いていれば、医療機関を紹介したり、児童心理士などが継続的なかかわりをしたりできたはず」と話した。

  一方、警察署によると、退院後間もなく少年が署に姿を見せ、あいさつをした。その後、署に電話があり、応対した署員は再び罪を犯さないように励ましたという。署の幹部は「罪を犯していない人に強制的な措置をとることはできず、応援することしかできない」と話した。

  少年が元継父からの性的虐待について初めて明かした相手は、少年院の教官だったとされる。その際、教官からは「だからといって自分の罪が許されるわけではない」などと諭されたという。

  少年院では、性犯罪に関するビデオを見たり、被害者の手記を読んで反省文を書いたりする更生プログラムを受けた。しかし、「自分は変だ。どうしたら止められるのか」という答えは見つからなかったという。

  判決前、少年は拘置所から朝日新聞の記者にあてた手紙で、「1人で考えて1人で解決しようと思いましたが、やはり無理でした」とつづっていた。

  判決で多和田隆史裁判長は少年が性的虐待を受けていたことについては「くむべきところはある」としたが、罪のない少女2人に被害を与えた事件の重さから、「犯行は悪質だ」と断じた。

  ■国立成育医療センターこころの診療部長で小児精神科医の奥山真紀子さんの話 

  男の子が性的虐待の被害者となった場合、加害者になってしまう危険性がある。しかし、児童相談所や少年院に、対応できるプログラムがないのが現状だ。救いを求めてきた少年の犯行を止められなかった責任は、受け皿を持たない社会にある。犯した罪の責任を本人が取るのは当然だが、再犯を防ぐには、犯罪を起こしてしまった心理的なメカニズムを探り、それぞれの問題に応じた受け皿を用意する必要がある。

http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000000701120001