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2007年01月12日(金) 00時00分

日本、総括なき追随 共同歩調を最優先 東京新聞

 政府はブッシュ米大統領が十日夜(日本時間十一日未明)に発表したイラク新戦略を早速、事実上支持した。だが、これまでの米イラク政策に対する総括もないまま、新たな戦略に対する支持表明は、対米追随の印象が否めない。 (吉田昌平)

 大統領のこれまでのイラク政策も評価してきたが、大統領自身が失敗を認めて見直した新戦略も支持する−。米国のイラク政策に関する政府の評価は、ひと言でいえばこうだ。

 昨年六月の日米首脳会談で、小泉純一郎首相(当時)は「イラクの国づくりを支持し、大きな成果を達成したブッシュ大統領の指導力にあらためて敬意を表する」と伝えていた。

 そして、安倍首相は今回の新戦略について、大統領との電話会談で「米国の努力がよい成果を上げることを強く期待する」と“支持”した。大統領が失敗を認めて打ち出した新戦略は「イラクの安定化に向けた米政府のさらなる努力として評価する」(塩崎恭久官房長官)という。

 ただ、新戦略に基づくイラクの治安回復に対しては、政府内も「期待できない」(防衛庁幹部)と懐疑的だ。

 部隊の増派により一時的な治安の小康状態をつくり、撤退の機会をうかがうのが米戦略との見方もある。

 このため、政府の支持表明も腰は引けている。二〇〇三年のイラク戦争開戦時、小泉首相は記者会見を開き、「米国の武力行使開始を理解し、支持します」と他国に先駆けて明言した。しかし、今回の新戦略に対しては安倍首相を含め、だれも「支持」の二文字は使わない。

 それでも米国との共同歩調を最優先せざるを得ない政府。

 新戦略の実効性には半信半疑ながら、選択肢は“支持”しかなかったことになる。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20070112/mng_____sei_____003.shtml