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2007年01月11日(木) 00時00分

単独犯説に不満? 姉歯勝算見込み薄なのに控訴の真意ZAKZAK

被害住民は激怒「何を考えているのか」

 「控訴なんて何を考えているのか。反省の色もまったく見えないし、少しも悪いと思っていない。彼の公判での言葉を借りるなら、まさに、すべての感覚が麻痺してしまっているのだろう」。怒りを露わにするのは、グランドステージ(GS)住吉の被害者対策委員会の会社員(43)。

 GS住吉では事件後、全67世帯が退去を余儀なくされた。住民が抱えたローンに関しては、元金は3年間の据え置きとなる猶予措置が取られた。

 支払いは利息分のみとなり、仮住まいの家賃の3分の2は行政が負担することになったものの、残りの家賃は自己負担となってのしかかる。

 「月々の負担額はローンを払うのと変わらない。ローンは据え置きとなっただけで、消えたわけではない」

 建て替えた物件に入居した場合、新たに2000万円前後の負担増となる。窮地に立たされた被害者住民の怒りは消えない。

 16件もの被害物件が発覚した千葉県船橋市の担当者もただ呆れ果てるばかり。建設指導課の中山君雄課長は「被害住民は二重苦、三重苦を味わっている。控訴するなんて自分のしたことがわかっているのか。罪の意識も反省もない証拠だ」と憤慨する。

 姉歯被告は公判で、事件の責任が自分にあると認め、理由を「生活のため」と主張した。だが、不法所得はBMWやベンツといった高級外車を乗り回し、愛人と蜜月を楽しむためだった。姉歯被告が控訴しても、勝算があるとは思えない。

 「欠陥住宅を正す会」代表、澤田和也弁護士は「姉歯被告は、自分だけの単独犯説に不満を感じているとみられる。一連の犯行で、もっとも利益を得たのは誰かという追求がおざなりにされている点で、何らかの主張があるのではないか」と推測する。

 自分に偽造させた“黒幕”を暴いて欲しいとの思いが、姉歯の胸中にあるというのだ。

 澤田氏は「建築基準法違反の法定刑は30万円以下の罰金のみと軽い量刑のわりに、議院証言法違反と建築士法違反幇助(ほうじょ)だけで、ここまでの判決になるのは重過ぎるのではないかという言い分もあるのだろう」との見解も示す。

 姉歯の行為は、まさに「殺人未遂」。約300戸もの住民の人命を危険にさらした姉歯被告の罪に、東京高裁はどんな決断を下すのか。

ZAKZAK 2007/01/11

http://www.zakzak.co.jp/top/2007_01/t2007011130.html