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2007年01月10日(水) 16時22分

死刑囚「重い過ち」短歌に 歌集出版、2年で350首朝日新聞

 獄中の死刑囚が詠んだ短歌350首をまとめた歌集「終わりの始まり」が、口語自由律短歌誌「未来山脈」(長野県下諏訪町)から出版された。死刑囚が心の安定を求めていた時に未来山脈を知り、主宰する光本恵子編集発行人(61)の2年余の指導と、会員たちの協力で出版資金も集まった。

 天国へのパスポートもう期限切れなのか何処(どこ)で乗るのか駅も分からぬ

 詠んだのは元不動産ブローカー、岡下香死刑囚(60)。89年秋、東京都杉並区のアパート経営者を絞殺し、詐欺の共犯とされた元保険代理業者も射殺したとして05年3月、死刑が確定した。

 光本さんの元に、岡下死刑囚から手紙が届いたのは04年8月。平易な現代口語で詠む「未来山脈」を東京拘置所で知り、光本さんの「短歌は死の向こうにも明かりが灯(とも)っている」という言葉に感銘して「指導を仰ぎたい」との内容だった。

 光本さんは、手紙で短歌を添削した。月に10首が掲載され続け、歌友と交流の輪が広がった。

 獄舎にもあるささやかな幸せ 米粒ほどの蜘蛛(くも)が顔を見せたとき

 光本さんは死刑確定前、岡下死刑囚に面会に行った。「生死の極みの中で詠まれた内容に心奪われた。短歌は人の深い思いを伝えますね」

 あとがきで、岡下死刑囚は「もう部屋を移動することのない死刑囚にとって、執行に至るまでに大きな地獄をさまようことになります。今回の歌集の出版は尊い命を奪う過ちの重大さを多くの人に伝えなければいけない。私にはその責務がある、との意からであります」と記している。

 B6判208ページ、2000円。問い合わせは未来山脈社(0266・28・2442)。

http://www.asahi.com/national/update/0109/TKY200701090413.html