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2007年01月09日(火) 00時00分

不都合な真実読売新聞


『不都合な真実』
2007年1月20日(土)よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにてロードショー
配給:UIP映画

 Happy New Year – 皆さん、今年もよろしくお願いいたします!

 さて、2007年New Year's resolutions(新年の決意)は何かしましたか?今回お勧めするドキュメンタリー映画「不都合な真実」を見れば、もう1つの誓いを今年のリストに加えようと思うかもしれませんよ。

 「新年早々何だか重そうな映画。せっかく休んでいい気分になってんだから勘弁してよ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この映画が皆さんを落ち込ませることはないと思います。確かにショッキングであることに違いありません – いまこの地球に生きる私たちがどんな危険にさらされているのか、そしてそれが思っていた以上にいかに早いペースで迫ってきているのか、この映画はそのことを力強く伝えてくれています。

 ところが見終わった私は、絶望するどころかむしろ強い決意を胸に奮い立ちました。「見てよかった。何か手を打とう!」、自分の生活の仕方を変えることを決心しました。それほどパワー溢れる作品なのです。

 「不都合な真実」の "主人公" はアメリカの元副大統領、アル・ゴアです。ゴアは1960年代から環境問題を強く意識し、2000年の米大統領選で敗北して以来、環境問題についてスライド講演を世界中で行っています。「不都合な真実」はその講演と、この話題に関するゴアの経歴を見せてくれます。

 「スライド講演?やっぱやーめた!」なんて声が聞こえそうですが、いいえ、これはマイケル・ムーア監督の「ボウリング・フォー・コロンバイン」に勝るとも劣らない、本当に興味深い作品です。「ザ・シンプソンズ」の製作者が作ったアニメーションからニュース映像まで、ゴアはさまざまなメディアを活かし、さらに自分のスピーチにユーモアをたっぷりこめています。

 私が特に気に入ったのは、ゴアが二酸化炭素 (carbon dioxide) の大気中の濃度の上昇を大きな図表で示すところです。一番最近のレベルを見せるためにゴアは図表のとなりに設置されている、工事現場で使われるような昇降機に乗り、図表の一番上まで上っていきます。この独特な方法は見る人を笑わせながらも、二酸化炭素の険しい高さを見事に実感させてくれています。

 また彼は自分自身をからかうような冗談を交えながら実に面白く語っています。例えば、2000年の大統領選で一度は「勝利確実」と報道されながら、例のフロリダ州の得票数の再集計問題が起き、結局落選が決定しました。それで彼は講演の冒頭で「初めまして。『元、次期大統領』だったアル・ゴアです」となんて言って自己紹介をします(笑)。

 もちろん、決して笑えない部分も少なくありません。溶け出した北極の氷のため、泳いでも泳いでも氷が見つからずおぼれてしまうホッキョクグマの話。たった数十年で雪が消えてきている世界の山々。「自然より人間の利益を優先しなくては」と主張する人もいますが、このまま温暖化が進めば結局一番困るのは人間だということも、ゴアはしっかりと証明してみせています。

 例えば、北極の氷がすべて溶けた場合、世界の海は現在より6メートルも上昇するそうです。フロリダ州や中国の大部分は水没してしまい、約1億人の難民が予想されています。また、いまだに大勢の人々は夏に溶け山から流れてくる水から飲料水を得ています。その資源がなくなればどうなるでしょう?結局まだ見つからない「大量破壊兵器」のためにあれだけの戦争が起こったのです。水のために世界中を巻き込んださらに悲惨な戦争が起こる、そんな可能性はまったくないと一体誰が言い切れるでしょうか。

 ゴア自身も語っているように、私たちが救うべきは、地球ではなく私たち自身なのです。人間がいなくなったからといって地球が悲しむわけでも困るわけでもありません。

 「不都合な真実」というタイトルは、温暖化が政治家やビジネス界には都合が悪いということを意味しています。しかし私たち一人ひとりがこの問題の解決にわりと簡単に貢献することができます(具体的な方法は www.team-6.jp/ で説明されています。是非ご覧になってください)。1つの手は暖房の設定温度を下げることです -- 実はこの映画を見た私は、その日家に帰ってすぐ暖房を4度も下げました。

 今回は hot cold を使った表現をご紹介しましょう。

blow hot and cold

同じ口から暖かい息と冷たい息を吐くイメージで、肯定的になったり否定的になったりと、言うことや態度がころころ変わる、という意味です。

旅行を計画している男性を想像してみましょう。ところが彼のカノジョは行きたいのか行きたくないのかどうも態度がはっきりしません。あるときは「楽しそうね、まだ行ったことないし」と、とてもポジティブになったかと思うと、翌日には「高いし、休めるかどうか分からない」と急にネガティブになります。こんな彼女のことを、彼は次のように言うかもしれません。

She's blowing hot and cold about the trip.

恋愛関係についても使えます。例えば、しばらくの間彼はとても優しかったのですが、突然ある日から冷たくなります。そんなことの繰り返しだから結局私から別れたという場合、次のように言えます。

He was always blowing hot and cold, so I dumped him.

hot potato

焼きたてのポテトを触るとやけどしますね。そのイメージでこの表現は「扱いにくい、危険な問題」という意味です。関わる人に悪い結果が出る可能性が高い場合に使います。

アメリカでは同性愛者同士の結婚がその1つです。政治家が応援すると保守的な人から批判されますが、反対するとリベラル派から批判されます。英語で言うと、

Gay marriage is a political hot potato.

in the hot seat

この表現は電気いすに座っているイメージを使っています(いやなイメージですね)。重大な決定を迫られている、あるいは大きな期待を寄せられているから「難しい立場にいる」、という場合について使います。

深刻な経済問題を抱えている国の首相に選ばれた人を想像してみましょう。経済問題に立ち向かい、成果を上げなければマスコミと国民から厳しく批判されるに違いありません。英語で言うと、

As the new prime minister, he's in the hot seat on the economy.

怒られている、批判されている人についても使います。例えば最近、あのブリトニー・スピアーズが毎晩のようにバーなどで遊び、先日丸見えのノーパン姿を撮られてしまいました。「小さな子供を2人も抱えている母親なのに」と彼女は厳しい批判の的になっています。下手をすれば、彼女のキャリアそのものがダメになってしまう可能性もあります。英語で言うと、

Britney's in the hot seat over her behavior.

in hot water というバリエーションもあります。これは怒られている場合だけに使います、難しい立場にはふさわしくありません。例えば、私が大切なコンピューターファイルをなくしてしまったら、上司に怒られてしまうでしょう。英語では、

I'm in hot water for losing the file.

stop cold

「突然、急に止める」という意味です。驚いて唖然としてしまうような場合によく使われます。

例えば、数年前「ジョイ・ラック・クラブ」という映画についての記事を読みました。中国系アメリカ人を描いたこの映画を是非作りたいと、映画会社の若い役員が上司に提案すると、上司は「アメリカ人が1人も登場しないからダメじゃないか」と答えたそうです。

それを読んだとき「東洋系のアメリカ人はアメリカ人じゃない」という、その発言に潜んでいる差別的な意識に私は唖然としました。英語で言うと、

That statement stopped me cold.

この表現と、stop dead というバリエーションも、実際に止まる場合にも使います。例えば、去年私のアパートの近くに蛇が現れました。毒蛇ではなかったのですが、隣に住んでいる少年が見たとたん、驚いて凍りついていました。

He stopped dead when he saw the snake.

go cold turkey

直訳で「冷たい七面鳥」という意味のこの表現が、なぜ「常用していた麻薬やたばこを突然やめる」という意味で使われるようになったんでしょうか?実は、辞書に説明がありましたが、よく理解できませんでした。申し訳ございません(笑)。

麻薬ほど深刻なものでなくてもOKです。例えば、去年の3月まで私は毎日のようにダイエットコーラを2、3本飲んでいました。しかしある日、きっぱりやめました。去年3月から私は一滴も飲んでいません。英語で言うと、

I went cold turkey and completely gave up Diet Coke.

や、 は、音声・動画ファイルです。ご覧いただくには、動画再生ソフト Real PlayerまたはWindows Media Playerが必要です。

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/heather/h_review/20070109et05.htm