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2007年01月08日(月) 12時16分

倫理委が延命治療中止容認の結論 岐阜県立多治見病院朝日新聞

 岐阜県多治見市の県立多治見病院(舟橋啓臣院長)の倫理委員会が昨年10月、病院の終末期医療のマニュアルに沿って80代男性の延命治療中止を容認していたことが分かった。最終的に院長が認めず、男性は治療を受けながら死亡したが、延命治療中止を巡っては国や学会などに明確な指針がなく、病院の倫理委段階での容認も珍しいという。

 病院によると、男性は昨年10月、食べ物をのどに詰まらせて、心肺停止の状態で救急車で運ばれた。救命救急センターの治療で心拍が再開したものの、人工呼吸器を付け、強心剤投与が続けられ、回復の見込みがないと診断された。

 男性は96年7月14日付で「重病になり、将来、再起(の可能性が)ないとすれば延命処置をしないでほしい」とする文書を家族に託しており、入院2日目に家族が延命治療の中止を申し出た。

 病院はマニュアルに従って、副院長を委員長とする倫理委員会(外部委員2人を含む13人で構成)を開催。この男性の治療に関係していない医師2人の「回復の見込みがない」とする診断と、文書は本人の直筆か、書いた後で意思の変化はないかなどを確認したうえで、昨年9月に作った病院の終末期医療のマニュアルに沿い、人工呼吸器を外すことなどを容認した。

 しかし、倫理委の報告を受けた舟橋院長は「国などの指針が明確でなく、時期尚早」と判断。昨年3月、富山県の射水市民病院で人工呼吸器を外して問題化した例もあり、「現段階では、医師だけが責任を問われかねない」として治療中止を認めなかった。

 男性は入院3日目に、人工呼吸器などの治療を受けたまま、「蘇生後心不全、蘇生後脳症」で死亡したという。

 男性の治療にかかわった同病院の間渕則文・救命救急センター長は、延命治療の中止について「現場の医師は日常的に判断を迫られている。法整備やマニュアルがないと、医師1人が悪者にされた射水病院のようなことが今後起きる」と話している。

http://www.asahi.com/life/update/0108/004.html