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2007年01月07日(日) 00時00分

ミクシィ追撃に自信 SNS『マイスペース』創業者に聞く 東京新聞

 昨年末の米誌タイムが毎年恒例の「今年の人」に選んだのは「あなた」。インターネットで情報を発信し始めた一般の人たちだった。個人による情報発信の原動力になったのが動画投稿サイトやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)だ。中でも「マイスペース」は世界で会員数一億人を超え、十一月には日本にも参入するなど急成長中。トム・アンダーソン社長(30)、クリス・デウォルフ最高経営責任者(40)の二人の共同創業者に成長の背景と今後の戦略をロサンゼルスの本社で聞いた。 (聞き手・池尾伸一、写真も)

 ——起業のきっかけは。

 アンダーソン氏「思いついたのは四年前。当時SNSサイトはすでにいくつかあったが、デートの相手を探す出会い系とかビジネス人脈を広げるサイトとか目的が特化していた。私たちは利用者が自作の音楽やビデオも載せられ、社交、人脈づくり、自己表現など何でも自由に使えるサイトをつくろうと思った」

 「資金もない中でどうしたら利用者を増やせるか考えた末、ミュージシャンや映像作家など自分でも何かをPRしたいと思っている人たちに使い広めてもらった。ロスはハリウッドに近いので、そうした人はたくさんいる利点があった」

 ——急成長の背景は。

 アンダーソン氏「自己表現とコミュニケーションを効果的かつ簡単にしたからだ。無料で手間をかけずに音楽やメッセージを載せられる。友だちに近況を伝えるのでも一人一人にメールや電話しなくても自分のページに書き込めば、みな見てくれる。また、初対面の人と電話番号やメールアドレスを交換するのはちょっと勇気がいるが、『これマイスペースのアドレスだからひまな時にみて』というのは気軽にできる。人脈づくりのきっかけになりやすい」

 デウォルフ氏「米国ではすでに六千万人も利用している。年齢層によっては利用していないと取り残される必需品になりつつある。半面、電子メールを利用する人は減っている」

 ——子どもたちがマイスペース上で出会った性犯罪者の犠牲になる問題も深刻化している。

 デウォルフ氏「それは深刻に受け止めている。十四歳未満の子どもが使えないルールを徹底するため、技術者だけでなく学校との連携などあらゆる手を打っている」

 ——日本ではミクシィが五百万人以上の会員を得て先行しているが。

 アンダーソン氏「ミクシィは純然たる社交サイトだ。われわれはビデオや音楽などを載せられ、もっと自由にいろんなことができる。日本でも拡大できる」

 ——二〇〇五年に世界的なメディア王、ルパート・マードック氏率いる米ニューズ・コーポレーションに保有株式を五億八千万ドル(約六百九十億円)で売却した。同社はブッシュ政権に近く保守的なイメージが強い。

 デウォルフ氏「ニューズコープは政治的には保守的なイメージがあるが、四十年前には新聞チェーンをつくり、CNNに対抗するFOXテレビを設立するなどいつもメディア界を先取りする先進的企業だ。われわれには従来通り経営をやらしてくれるということで契約を結んだ」

 ——ベンチャー企業成功のコツは。

 アンダーソン氏「最初から巨額な資金が必要だと思うのは間違い。一つの偉大なアイデアより、いくつかのアイデアを実際に試してみて、利用者の声を聞いて改善していく方がよい。われわれもそうした」

 デウォルフ氏「ベンチャーキャピタル(VC)の投資家やアナリストにも多数会ったが、ほとんどの意見は結果的に間違っていた。結局、最後は自分の本能を信じることだ」

 ——七百億円もの大金を何に使うのか。

 デウォルフ氏「まだ特にドラマチックなことには使っていない」

 アンダーソン氏「洗濯機を買ったぐらいだ(笑)」

<メモ>マイスペース 写真や好みの音楽、ビデオなど好きなものを掲載し、アクセスしてきた人たちとの間でメールや音楽をやりとりできるサイト。カリフォルニア大で映画を専攻したアンダーソン氏と南カリフォルニア大ビジネススクール卒のデウォルフ氏が2003年に創業。デウォルフ氏が働いていた広告会社が日給25ドルでアルバイトを募集したところ、学生だったアンダーソン氏が応募。優秀さに驚いて正社員に雇ったのが2人の出会い、という。いまも二人三脚の経営を続けている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20070107/mng_____kakushin000.shtml