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2007年01月06日(土) 13時39分

シャンソン先生ダメ? 私立小教員、コンサート開き停職朝日新聞

 シャンソンのコンサートを開いたことを理由に停職処分を受けたのは不当だとして、大阪市城東区の私立小学校の女性教員(54)が、同小を経営する学校法人「大阪信愛女学院」を相手取り、処分の無効確認と慰謝料など353万円の支払いを求める労働審判を大阪地裁に申し立てたことがわかった。女性教員はシャンソン歌手として活動しており、「歌手をするのは憲法が保障する表現の自由にあたる」と主張。これに対し、学院側は「就業規則上、兼業を認められていない」として全面的に争う構えだ。

 同学院は就業規則19条で「職員は、他の事業を営んだり公私の事業や事務に従事したりする場合、所属長(校長)の承認を経なければならない」と定めている。

 申立書などによると、女性教員は76年から同小で勤務し、93年に定期コンサートを開くなどの歌手活動を始めた。毎月数回、大阪市内のライブハウスで開かれるコンサートなどに出演しているが、開催費や衣装代などに費用がかかるため、年間数十万円の赤字になるという。

 女性教員は昨年8月に大阪市北区で開いたコンサート(入場料3千円、大学生以下千円)の前、担任をしていた1年生の児童33人に家族の分を含めた約100枚の無料招待券を郵送した。これに対して学院側は、女性教員が校長の許可を得ずに「他の事業」に携わったとして、同11月6日から30日間の停職処分とした。

 女性教員側は、コンサート開催の約1カ月前に校長に口頭で伝えて了承を得ていたうえ、利益を得ていないため「他の事業」にあたらないと指摘。「児童を招いたのは音楽と触れ合う機会を与える教育的配慮からであり、そもそも歌手活動は表現の自由にあたる」として、同12月5日付で労働審判を申し立てた。

 さらに、停職処分が解けた後に正当な理由もなく学級担任をはずされたとして、担任としての地位保全などを求める仮処分を同28日に同地裁に申し立てた。

 女性教員は97年にもディナーコンサートに出演したとして担任をはずされたほか、99年には同様の理由で同学院から注意を受けている。

 同学院は朝日新聞の取材に対し、「コンサート開催の許可を得るには文書の提出が必要だった」と了承を否定。そのうえで「停職処分の理由には、職務外の活動のために児童の個人情報を利用して招待券を郵送した行為も含まれている。教員がプロ歌手を兼ねることは業務に支障が出るおそれがある」と反論している。

 教員の兼業については、公立校の場合は地方公務員法などで原則禁止だが、私立校は各校に判断が任せられている。

 〈労働審判〉 職場の労使間トラブルを迅速に解決するため、昨年4月に導入された。全国50地裁に置かれた「労働審判委員会」が審理し、申し立てから40日以内に1回目が開かれる。委員会のメンバーは裁判官1人と労組役員経験者などの専門家2人で構成され、原則3回以内の審理で決着を図る。審理の過程で解決の見込みがあれば調停も試みるが、成立しなかった場合、同委員会が「解決案」を提示。双方が受け入れれば、裁判の「和解」と同じ効力を持つ。2週間以内に異議申し立てがあれば、争いは民事訴訟に移る。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200701050064.html