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2007年01月06日(土) 17時22分

CO警報器の電源切り中毒死相次ぐ 過剰な感知が裏目朝日新聞

 東京都内の飲食店などで相次ぐ一酸化炭素(CO)中毒による死傷事故で、室内のCOを感知する警報器が作動しない状態になっていた例が多発していることが分かった。警報器が過敏に反応するために利用者が電源プラグを抜いて作動しない状態になっていたケースが多いとみられ、東京ガスは事故につながる濃度のCOにだけ反応するようセンサーを改良した警報器への無償交換を始めた。

空気中の一酸化炭素を感知する改良型の警報器。東京ガスは、過剰反応があった従来の製品と交換を進めている=東京都渋谷区で

 COは空気中の濃度が0.16%に達すると約2時間で死亡するとされるが、色やにおいがないため頭痛や吐き気などの症状が出るまで発生に気付きにくいという。

 東京ガスによると、同社管内(東京、神奈川、埼玉、千葉など1都7県の都市部)では、96〜05年度の間に34件のCO中毒事故があり、このうち19件が飲食店で発生した。03年9月には東京都新宿区のラーメン店で従業員ら2人が中毒死するなど、死者も13人出ている。

 同社が事故のあった飲食店の厨房(ちゅうぼう)などを調べたところ、初めから警報器が設置されていなかった店のほかに、警報器が設置されていたものの、電源プラグが抜かれている状態の店があった。

 06年に入ってからも、6月には東京都豊島区の洋菓子店で従業員8人がCO中毒でめまいなどを訴え、翌7月には中央区の日本料理店で仕込み作業をしていた従業員の男性(当時30)が死亡するなど事故が相次いだ。

 いずれの事故現場でも、警報器は設置されていたが、電源プラグが入っていなかったことが分かっている。CO中毒とみられる事故は05年以降、ほかにも盛岡市や神奈川県平塚市、熊本市などで相次いでいる。警報器の設置は義務づけられているわけではなく、業務用警報器の普及率は3割程度という。

 機器から8メートルの範囲でCOを感知すると警報が鳴る仕組みだが、従来の機器では、一時的に発生したCOにセンサーが反応して警報が鳴るケースもあったという。同社は「飲食店の厨房などでは、点火時に一時的なCOが発生しやすく、そうした状態でも警報が鳴る従来の機器では適さない面もあった」と認めている。

 東京ガスは飲食店などでのCO中毒事故の多くは、仕込み中や片付けの最中に換気扇を止めてしまう「換気忘れ」が原因とみている。同社は「万一COが発生しても、警報器が作動すれば死傷事故を防げた可能性が高い」として、一定時間に一定量の血中濃度に相当するCOを感知すると鳴動するようセンサーの精度を高めた小型の警報器の設置を昨年11月から始めた。

 東京ガスによると、同社管内の業務用の顧客は50万軒。今年度から3年間で17万軒の警報器を取り換える方針だ。家庭用ガス機器については、パロマ工業製の旧式のガス湯沸かし器で死亡事故が相次いだことを受け、東京ガスは昨年から旧式の製品の交換を進めている。

http://www.asahi.com/national/update/0106/TKY200701060210.html