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2007年01月06日(土) 10時07分

図書検索の「癩」修正へ ハンセン病差別図書館放置 元患者ら指摘 全国に要請拡大西日本新聞

 全国の多くの公立図書館の検索システムで、図書を分類する項目名(件名)にハンセン病の差別的な表現とされる「癩(らい)」の表記を使用しているとして、ハンセン病関係者が改善を要求し、一部の図書館が修正作業を始めていることが5日、分かった。日本図書館協会(東京都)は、修正の要望について、全国約2600の会員図書館に通知することを検討しており、修正の動きは今後、全国に広がる見通し。

 改善要求の中心となっているのは熊本県合志市の国立ハンセン病療養所・菊池恵楓園入所者自治会の志村康副会長(73)ら。志村副会長は「公的機関の図書館で、差別表記が放置されていることに驚いた。時代錯誤も甚だしい」と批判、ハンセン病市民学会(事務局長・藤野豊富山国際大助教授)を通じ、全国の図書館に修正を求めていく。

 「癩」表記が使われているのは、電子データ化された図書の検索システムで、利用者が「件名」の欄に「癩」と入力すると、ハンセン病関連の書物が検出される。

 「件名」は通常、日本図書館協会が刊行する「基本件名標目表」を参考に各図書館が付ける。だが実際は専門業者が作製した電子データを図書館が購入し、そのまま使用するケースが多いという。

 標目表は1999年の第4版で「癩」から「ハンセン病」に表記を変更したが、業者が引き続き「癩」の表記を使ったり、過去のデータが残ったりしているという。

 九州7県の県立図書館でも「癩」が使用されていたが、熊本県立図書館(熊本市)は昨年末、西日本新聞の取材を受け「ハンセン病」に修正した。同図書館は「気付いていなかった。配慮が足りなかった」と話している。

 全国では三重、広島、鳥取などの県立図書館で既に修正されており、鳥取県では県内の市町村立図書館にも通知し、ほぼ修正が終わったという。


■癩(らい)

 らい菌によって皮膚や末梢(まっしょう)神経が侵される感染症のハンセン病は「癩」「癩病」と呼ばれていた。一部の宗教ではかつて「癩」を忌まわしい対象とみなし、天が罰を下した「天刑病」や、過去の悪事の報いを受けた「業病」と解釈。「治らない病」「遺伝病」などと誤解された。

 このため、差別的なイメージも連想させるとして、患者自治会の全国組織が呼称を改めるよう国に要請。国は53年に「らい」と平仮名表記にしたが、そのまま使用を続けていた。96年のらい予防法廃止後、国は「ハンセン病」の呼称を使用するようになった。


=2007/01/06付 西日本新聞朝刊=

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070106-00000000-nnp-l43