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2007年01月04日(木) 18時08分

インタビュー:同人発の名作ゲーム「ひぐらしのなく頃に」 竜騎士07さんに聞く毎日新聞 まんたんウェブ

 コミックマーケット(コミケ)で生まれたサウンドノベルゲーム「ひぐらしのなく頃に」。昭和50年代の寒村で起きた猟奇殺人をテーマにしたサスペンスホラーは、ネットを中心に人気が爆発。本編5話で計約40万本以上を売り上げる同人ゲームでは異例の大ヒットとなった。07年初めには、PS2版「ひぐらしのなく頃に 祭」も登場する。作家の竜騎士07さんに同人ゲームの名作誕生の裏側を聞いた。【渡辺圭】

--「ひぐらし」はどのようにして生まれたのですか。

竜騎士 かなり昔に演劇にはまって、よく見に行っていた時期があって、演劇サークルというか小劇団の人たちと知り合ったんですね。自分も参加したいなとは思ったのですが、演技は出来ないので、脚本という形ならと考えて台本を書いてみたんです。それが「雛見沢停留所」という作品で、現在の「ひぐらしのなく頃に」のダイジェスト版のような内容で、まさに原型ですね。ところが、この脚本は上演されることもなく、台本も2冊しか存在せず、埋もれてしまったんですね。もったいないので、人物やエピソードを付け足して、02年夏にノベルゲームとして第1話の「鬼隠し編」をコミケで発売したんです。

--どうしてノベルゲームだったのですか。

竜騎士 小さいころからゲームが大好きで、なんとかゲームというメディアで表現をする人になりたいと思っていたんですが、当時かなり硬い仕事をしていてフラストレーションがずっとたまっていたんですね。そこでまず、カードゲームを自作する創作サークルを始めてコミケで売っていたのです。で、そのうちに手伝ってくれている弟が、ノベルゲームのプログラムを勉強してきまして、せっかく作れる人がいるんだから作ってみようかと思い立って、例の脚本を書き足してノベルゲームにしていったんですよ。

--反応はどうでしたか。

竜騎士 50枚しか作らなかったのですが、それでも余ってしまいましたね。幸いなことにカードゲームはよく売れていたので、通信販売でカードゲームを買ってくれた人に送ったりしたこともありました。ただ、カードゲームのサークルとしてはそこそこ注目されていたので、次の02年冬のコミケでは100枚にするなどまるで売れないということはなかったと思います。

--ブレークしたのは。

竜騎士 03年夏のコミケの後に、もうちょっと宣伝しないとダメだろうから、1話をネットで体験版を無料公開したらどうだろうと仲間と話し合ったんです。買ってくれた人には申し訳ないと思いましたけど枚数も少ないのでいいかなと思って試してみたら、とにかくすごい数がダウンロードされまして、謎解きサイトなども出来るようになりました。ここからはとんとん拍子でした。03年冬のコミケでは1500枚用意したのですがすぐに売り切れ。04年夏のコミケは大手サークルの証しとも言うべきシャッター前という大きな場所になって、同人ショップでの販売も含めて1万枚を超えたと記憶しています。

--なぜブレークしたのだと思いますか。

竜騎士 今でも理由は分からないのですが、ネットプロモーションの勝利だと分析しています。特にインターネットの発達で探せないものはほとんどない時代なので、ブランドものでなくても面白いものをお客さん自ら探してくれます。そういう時代性にマッチしたんじゃないんですかね。

--作品自体の発想はどこから生まれたのですか。

竜騎士 映画とゲームは大好きなので、今までに自分が見て遊んできた映画やゲームが血肉となっていると思います。実は本をあまり読まないので、「金田一耕助」シリーズの横溝正史さんの作品の影響を指摘されることもありますが、全く意識していません。日本の寒村を舞台に、ボタンのかけ違いが悲劇を招くという構成が似ているのかも知れませんが、そうしたミステリーを極めようとか自分では思っていないんですよ。単純に、人間の身近なところで起きる悲劇を書いてるだけです。

--同人誌やアンソロジー本も多いようですが。

竜騎士 同人誌やアンソロジーはどんどん応援したいですね。書いた人の数だけ違う形の「ひぐらし」があるわけで、ものづくりの楽しさをみんなで味わえますから。私自身も読者の反応を見て、次の作品にどう取り入れるかを考えられるので、すごく役に立っていますね。

--漫画化やアニメ化もされましたが。

竜騎士 うれしい限りです。「ひぐらし」は読んだ人があれこれ考えて読んだ人同士で議論を楽しむものなんで、漫画やアニメの作り手さんたちが「ひぐらし」をどうとらえているのかが分るいい機会になります。しかも、マンガやアニメで初めて「ひぐらし」に触れる人の方が多いので、「じゃあ、本当の『ひぐらし』ってどうなの?」と思った人が原作のノベルゲームに戻ってくる流れになるんですよ。だって原作はコミケか同人ショップでないと買えませんから。メディアミックスは原作への入口となるという大きな利点があります。

--PS2のゲームが登場しますね。

竜騎士 PS2も新しい入口の一つです。アニメもマンガもダメな人はゲームから入ってほしい。特に、このPS2版は最終章以外のシナリオ全部と原作にはないシナリオもありますから、相当楽しめるはずですよ。

--今後の展開は。

竜騎士 「ひぐらし」がいよいよ完結します。完結編のタイトルは、これまで支えてくれたお礼も込めて「ひぐらしのなく頃に 礼」としました。その次の07年夏のコミケでは「なく頃に」シリーズの新作「うみねこのなく頃に」を発売するのでぜひ期待していてください。

竜騎士07/作家、ゲームシナリオライター。生年月日は未公表。代表作に「怪談と踊ろう、そしてあなたは階段で踊る」。「ドラゴンエイジピュア」(富士見書房)で小説「学校妖怪紀行 第八怪談募集中」を連載中。

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