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2007年01月04日(木) 20時36分

名張毒ブドウ酒事件、弁護団が特別抗告朝日新聞

 三重県名張市で1961年、ブドウ酒に入れられた農薬で女性5人が死亡した「名張毒ブドウ酒事件」で、名古屋高裁刑事2部が、第7次再審請求審(同高裁刑事1部)が認めた奥西勝死刑囚(80)の再審開始決定に対する検察側の異議申し立てを認め、再審開始決定を取り消し、再審請求を棄却したことを不服として、奥西死刑囚と弁護団は4日、憲法違反や最高裁決定・判例違反、事実誤認を理由に、最高裁に特別抗告した。

 弁護団は、特別抗告の理由を「異議審決定は、再審開始にも『疑わしきは被告人の利益に』が適用されるとした最高裁決定に反する。自白も直感的・印象的に判断した。破棄しなければ著しく正義に反する重大な事実誤認がある」などとした。

 特別抗告申立書によると、最高裁の白鳥、財田川の両決定では、弁護団が確定判決の有罪認定の根拠に合理的な疑いがあることを立証できれば、それが確実だと立証できなくても再審を開始すべきだとしていると主張。異議審の決定は、弁護側に認定を覆す決定的証拠を求めたと批判した。

 異議審が弁護団の新証拠を誤って評価したとも指摘。ブドウ酒の飲み残りから、奥西死刑囚が自白し、確定判決が凶器と認定した農薬「ニッカリンT」の特定の成分が検出されなかったとする新証拠について「毒物はニッカリンTだったが検出できなかったと考えることも十分可能」とした決定を「科学的根拠がない」と批判した。

 奥西死刑囚が歯で開けたとされる王冠(四つ足替栓)の足の一つが、歯ではできないような極端な折れ曲がり方をしているとする新証拠について「原因は別に考えることもできる」などとした決定には、「王冠が事件の瓶のものか疑いの余地がある」などと主張した。

 瓶は2度開栓が可能で、奥西死刑囚以外に犯行の機会があったなどとする新証拠について、決定は「実際に行われたとは考えられない」としたが、奥西死刑囚以外にも毒を混入する機会があったと主張した。

 さらに最高裁判例で、自白の信用性の判断基準は、秘密の暴露▽客観的証拠との符合▽変遷がない▽内容が不自然・不合理ではない——などを分析することが確立されていると指摘。「自白に秘密の暴露がない」「行為の根幹部分と物的証拠が矛盾する」などと自白の信用性を否定した。

http://www.asahi.com/national/update/0104/NGY200701040003.html