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2007年01月03日(水) 06時06分

空港工事下請け受注に裏金15億円 脱税事件の水谷建設朝日新聞

 法人税法違反(脱税)の罪に問われた中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)が、隠した所得約38億円のうち15億円を、関西国際空港と中部国際空港の建設工事を下請け受注するため、暴力団幹部や国会議員秘書らあてに裏金として支出していたことが、関係者の話でわかった。各捜査当局でも、裏金の額やその趣旨を把握している模様だ。巨額の公費が投入される海上空港建設で不正な資金が使われている実態が明らかになった。

関西空港。左手前が2期島=本社機から 

中部国際空港=本社機から 

 複数の関係者によると、裏金のうち10億円は、関西空港工事の受注が確実視されていたゼネコンから、下請けに入る条件として支出を指示されたという。残り5億円は中部空港向けで、受注調整に影響力がある会社に下請け工事を回してもらうよう依頼する趣旨だったという。

 裏金の授受の特定は難しく、各捜査当局とも、現時点では、15億円が実際に水谷建設の意図した相手に届いたかどうか確認していない模様だ。

 水谷建設は03年8月期と04年同期の2年間に、所得約38億円を隠し、法人税約11億4000万円を免れたとされる。

 関係者によると、中部空港をめぐっては、隠した所得のうち5億円を愛知県内の建設会社あてに支出。実体のない東京都と福島県内の法人への貸付金が回収不能になったように見せかけ、その2法人経由で現金を流す仕組みだったという。

 また、この15億円とは別に、水谷建設は、三重県内で中部空港用の土砂を調達する際、地元でトラブルが起き、その解決金として数億円の裏金を支出していたという。

 一方、99年着工の関西空港2期工事で、水谷建設は、受注が確実に見込まれていた元請けの共同企業体(JV)のうちゼネコン1社から、下請けに入れる条件として、地元対策のために暴力団幹部らに10億円を渡すよう指示されたという。

 この10億円は、暴力団幹部や複数の国会議員秘書、元秘書に対する仲介手数料のほか、暴力団上層部への上納金などにあてるため、裏金として支出されたという。水谷建設はこの金の処理のため、兵庫県内の実体のない法人に約7億5000万円を貸し付けたが回収不能になったように仮装していたという。

 水谷建設は、中部空港では、空港島や前島の造成工事などで大手ゼネコンのJVの下請けなどに入っていた。信用調査機関によると、03年8月期に同空港の下請け工事で約100億円の売り上げを計上。また、関西空港の2期工事では、和歌山市内から空港島造成に使われる土砂を運搬する事業の下請けに入った。この工事では、大手ゼネコンなどのJVが和歌山県の開発許可を得て、土砂の採掘事業を総額約1000億円で請け負っていた。水谷建設は工事受注で、裏金支出分を補填(ほてん)していたことになる。

 朝日新聞の取材に対し、水谷建設は、裏金支出について「そのような事実はなかったと考えています」と回答。裏金の支出先とされる愛知県内の建設会社や国会議員元秘書も受け取りを否定。10億円の裏金支出を指示したとされるゼネコンは「事実確認ができない」と答えた。

http://www.asahi.com/national/update/0102/TKY200701020130.html