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2006年11月16日(木) 14時48分

多重債務者に「ブラックリストの名前消す」 詐欺横行産経新聞

 多重債務に苦しむ人に嘘(うそ)の融資話を持ちかけ、手数料名目などでお金をだまし取る「融資保証金詐欺」の被害が深刻化している。今年夏、被害にあった川崎市内に住む30代の主婦のケースも、「(借金の)ブラックリストから名前を消す」という甘言に乗り、現金約50万円を詐取された。警察は詐欺容疑で捜査を始めたが、被害発覚までの経緯をみると、一刻も早い借金返済に焦る債務者の心理につけこんだ悪質な手口が浮かび上がってくる。

≪ブラックリスト≫

 消費者金融2社に約80万円の借金があったこの主婦に、都内の金融業者からメールマガジンが届いたのは8月中旬のことだった。そこには、他社の複数の債務を一本化し、低利での融資に「借り換え」ができると記されていた。

 数日後、主婦は同社のホームページ(HP)にあった番号に電話を入れた。応対した男は「あなたはお金を借りるのが難しい人のリスト(ブラックリスト)に載っており、今のままでは融資は無理だが、上司にかけあい、融資を受けられるようにしてあげましょう」と語ったという。

 指定された駅に到着すると、男は携帯電話で大手消費者金融の無人契約機に向かうよう指示。これを重ね、結局2社から70万円を借りる羽目になった。すると、男は「今回、あなたがお金を借りられたのは、自分が手を回したから」と語ったうえで、「動いてくれた」司法書士ら5人に礼金を払うようにいわれたという。

 主婦はコンビニエンスストアに向かい、指定された住所に現金49万円を宅配便で送った。伝票の品名欄には「書類」と記すように指示され、これにも従ったという。

 そして男は電話でこう語ったという。「あなたは2年から4年、ブラックリストに載り、その間お金を借りられなくなっていたはずだが、(手を回した結果)期間が8カ月に短縮できた。この8カ月間に4社に返済を続ければ、リストから外れ、当社も融資できる」

 冷静に判断すれば、ありえない話だが、この主婦は「当時はワラにもすがる思いで、考える力がなくなっていた」と後悔する。その後、主婦は信用情報機関に自分の信用情報の開示を求めたところ、「ブラックリスト」に載っていないことが分かったという。

≪人影のない本社≫

 この業者は今年冬、貸金業者として東京都に登録された。都貸金業対策課では「登録前と、5月に営業実態を確かめた」と語る。

 しかし、名簿に登録された電話番号に何度電話をかけても応答はなく、本社として登録された住所に足を運ぶと、そこはこぢんまりしたアパートの一室で、看板も人気もない。大家によると、代表者名で賃貸契約されているが、「人はまず来ない」という。

 年齢や職業など、どんな条件を打ち込んでも「お申し込み可能指数は93%」と出る、同社のHPに掲載された電話番号に電話をかけてみた。対応した男に、川崎市の女性の件で取材を申し入れると、「何を根拠に言っているのか」「(被害者)本人から電話してくださいよ」と言い、電話は一方的に切られ、その後、電話が通じることはなかった。

 「典型的な(融資保証金)詐欺の手口」と語るのは、主婦から事情を聴いた捜査関係者。詐欺の疑いがあるとみて、捜査に着手したという。

 また、警察庁のHPを開くと、主婦がお金を送ったあて先が、これまで「振り込め詐欺」被害者が現金などを送付した住所としてリストアップされていた。同庁は「よく知らない相手に現金などを送ることは危険」と注意を呼びかけている。

■1件あたり被害額増

 「融資保証金詐欺」の被害は深刻化しているようだ。警察庁のまとめによると、今年1〜6月の認知件数は4051件で、昨年同期に比べ1127件(21.8%)減少しているが、1件あたりの被害額は、昨年同期比10.4%増え、約73万円となっている。

 今年7月、大阪府警が摘発した融資保証金詐欺グループのケースでは、被害者の50代のトラック運転手が自殺。多重債務を抱えていたこの運転手は、詐欺グループから「消費者金融会社のブラックリストからデータを削除する」と持ちかけられ、手数料名目で500万円をだまし取られていたことが分かっている。

【2006/11/16 東京朝刊から】

http://www.sankei.co.jp/news/061116/bun003.htm