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2006年08月29日(火) 01時43分

8月29日付・読売社説(2)読売新聞

 [食品と放射線]「なぜ必要な技術をタブー視する」

 日本でタブー視されてきた食品の放射線処理が、市民権を得る契機にすべきだ。

 原子力委員会が、厚生労働省や食品安全委員会に対して、この技術の利用拡大について、検討するよう求めることを決めた。

 食品に放射線を照射すれば、付着した細菌や害虫を殺菌、殺虫できる。野菜の発芽も防止でき、長持ちする。コーヒー豆の成分抽出率が上がるなど、品質改善につながる例もある。

 こうした利点が認められ、原子力委員会によると、50か国以上で200品目以上が許可されている。うち40品目は実際に照射され、商品化されている。

 日本では、食品衛生法に基づき、国内での照射も、照射された食品の輸入も原則として禁止されている。

 認められているのは、ジャガイモの発芽防止を目的とする照射だけだ。1972年に世界に先駆けて許可されたが、照射分は出荷量の1%にも満たない。

 それ以降、「放射線」に強いアレルギー反応を示す消費者団体などが猛烈に反対し、国も食品を取り扱う業界も表立った議論が出来ない状態が続いている。

 世界では広く認められ、利用が拡大している技術だ。日本だけが背を向けていていいのか。原子力委員会が、食品安全を確保する技術の一つとして検討を求めたのは、もっともなことだ。

 2000年には、全日本スパイス協会が、香辛料について放射線照射の許可を求める要請書を、厚生省(当時)に提出している。だが、何の検討もされないままとなっている。

 世界では、食品の中で香辛料への放射線照射が最も普及している。熱や化学薬品による処理とは違って、放射線照射なら、色や香りを損ないにくいことが理由だ。欧州では統一許可品目となるなど、世界の標準的な手法と言っていい。

 原子力委員会は、香辛料について、具体的に検討の対象とするよう、求めている。厚労省も、いつまでもタブーとしている訳にはいかないはずだ。

 世界保健機関(WHO)や国連食糧農業機関(FAO)などは、食品の放射線処理について、適切に使えば安全、と何度も宣言している。原子力委員会の結論も、この判断を踏まえている。

 だが、放射線処理に理解を深めるには専門家の「宣言」だけでは足りない。世界の現状を含めて、もっと情報を発信して行くことも大切になる。

 利用を広げるには、消費者が理解しやすい食品表示の方法や、違法を許さない検知技術の整備など、検討項目が山ほどある。小田原評定ではいられない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060828ig91.htm