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2006年08月29日(火) 01時43分

8月29日付・読売社説(1)読売新聞

 [バス・タクシー]「地方での値上げはやむを得ない」

 原油高が、身近な交通機関の運賃にも波及してきた。

 大分県のタクシー会社が、上限運賃の約10%引き上げを国土交通省に申請した。路線バスでは、佐賀県の事業者が認可を得て、この6月、初乗り運賃を150円から160円に引き上げた。

 全国各地のタクシー、バス事業者が、これに追随しようとしている。

 タクシーが主な燃料とする液化石油ガス(LPG)の購入価格は先月、1リットル=71円になった。2003年度平均の58円から約22%の上昇だ。バスが使う軽油はそれ以上に高騰している。

 経済が停滞している地域を中心に、燃料高に耐えきれず、倒産に追い込まれるタクシー会社が出始めている。過疎地のバス会社は、赤字路線の廃止を加速させている。地方では、最小限の運賃値上げは容認せざるを得ないのではないか。

 これまで、タクシー運賃の値上げは、東京地区が先導してきた。その東京でも複数の企業が11年ぶりの本格値上げを目指し、検討を始めている。

 従来と環境が違うのは、タクシーは02年2月に大幅な自由化が実施され、値下げ競争が繰り広げられていることだ。

 国交省は、値上げ申請企業が持つ車両の合計が、その地域の法人タクシー台数全体の70%に達しないと、審査に着手しない。70%未満では値上げが有名無実化し、混乱する恐れがあるためだ。

 かつて、長野県の一部地域で数社が値上げを申請したものの、70%に届かず、撤回したことがある。

 東京など都市部では、「70%以上の申請が集まるか」「有力企業が据え置かないか」「個人タクシーは追随するか」などを巡って、複雑な駆け引きが展開されているようだ。

 燃料高で苦しいのは、都市部も地方も変わらない。しかし、大口ユーザー向けの割引率などを激しく競っている都市部で、一般利用者向けの運賃だけ値上げすることに理解が得られるかどうか。筋の通る説明ができなければ、タクシー離れを誘うだけの値上げになるだろう。

 ピークの1968年度に延べ101億人あった路線バスの年間輸送人員は、04年度には43億人にまで減った。この間の減少率は3大都市圏が38%、それ以外が69%で、地方での落ち込みが著しい。

 04年度の全国平均の経常収支率は、民営が96%、公営が83%と、いずれも赤字だ。赤字削減のための路線廃止が地方を疲弊させて乗客が減り、赤字がまた拡大するという悪循環に陥っている。

 軽油高に応じた国の「地方バス路線維持補助金」の増額もやむを得まい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060828ig90.htm