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2006年08月29日(火) 03時09分

<薬害エイズ>安部氏の非加熱製剤投与、カルテで逮捕を決断毎日新聞

 薬害エイズ事件で、安部英(たけし)・元帝京大副学長=控訴審審理中の05年4月、88歳で死亡=逮捕の決め手となった帝京大病院のカルテを毎日新聞は入手した。安全な加熱製剤の製造承認(85年7月)を目前に控えた85年5月12日〜6月7日、男性患者=91年死亡=に非加熱製剤「クリオブリン」を計3回投与したことが克明に記録されている。元副学長逮捕から29日で10年。事件化は困難とされる中、検察当局が立件に方針転換する契機となった重要な物証の詳細な内容が、初めて明るみに出た。
 カルテには昭和60(85)年5月12日に「右手関節のPain(痛み)」により「500U(ユニット=単位)」▽同6月6日に「rt.(右)手関節病」で「1000U」▽翌日同じ症状で「500U」のクリオブリンが投与された事実が記載されている。東京地検は同病院から大量の書類の任意提出を受け、カルテはこの中にあった。
 検察当局は当時、非加熱製剤の危険性が高まっていた85年に治療を受けた血友病患者を探していた。より早期の投与なら製剤の危険性を知る可能性(予見可能性)が低くなり、元副学長の無罪につながるためだ。カルテの記載は、帝京大の患者48例中23例が陽性と判明した後にもかかわらず、軽い症状の男性に大量投与したことを示しており、壁を突破する有力な物証とされた。
 もう一つのハードルは、投与によってHIV(エイズウイルス)に感染したこと、つまり因果関係の立証だった。
 検察当局は、患者の冷凍保存血が国立予防衛生研究所(現・国立感染症研究所)に残されていた事実をつかみ、96年5月23日、マイナス20度で保管されていた保存血を鑑定した。
 その結果、85年3月22日と同6月7日に採取された保存血は非感染を示す「陰性」だったが、同7月22日の血液は「陽性」に転じていた。検察は感染しても検出できない空白期間(2週間〜1カ月)を考慮のうえ、感染時期を85年5月10日〜同7月8日と特定。カルテに記載された3回の投与による感染は明らかと判断し、96年8月29日早朝、業務上過失致死容疑で元副学長の逮捕に踏み切った。
 01年3月、東京地裁は投与の事実や因果関係を認めたが「予見可能性が低かった」として無罪を言い渡した。元副学長は2審途中で認知症になり04年2月、公判停止。東京高裁は05年4月13日、「無罪にすべき明らかな場合に当たらない」と異例の「所見」を出したが、元副学長は12日後に死亡した。【小林直、堀文彦】
(毎日新聞) - 8月29日3時9分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060829-00000006-mai-soci