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2006年08月28日(月) 01時45分

防衛装備品にPL法適用されるか…陸自ヘリの損害賠償初公判産経新聞

 平成12年6月、静岡県の陸上自衛隊東富士演習場で起きたヘリ墜落事故で、防衛庁はエンジンの製造ミスが原因として、エンジンをライセンス生産した川崎重工業(神戸市)に対して製造物責任(PL法)に基づき約2億8000万円の損害賠償を求める訴訟の初弁論が28日、東京地裁で開かれる。

 「消費者保護」の高まりを背景にPL法が7年7月に施行されて以来、国が原告になったのは初めて。防衛装備品という特殊な製造物の欠陥についてPL法が適用されれば、高額な保険料負担など防衛産業に与える影響は大きく、訴訟の行方が注目されそうだ。

■事故

 ヘリ墜落事故は12年6月23日早朝、東富士演習場で、AH−1S対戦車ヘリコプターが上空約7.5メートルで空中停止中にエンジン出力を失って墜落、乗員2人が重傷を負った。ヘリに搭載されたエンジンは、防衛庁に納入されて2年半たっていた。  防衛庁が事故調査を行い、「エンジンの燃料制御装置内にある部品の組み立て過程における破損が原因である可能性が高い」と判断。今年6月、エンジンの部品を米国メーカーを通じて輸入、納品した川崎重工業を相手取り、ヘリの修理費用や乗員の治療費など総額約2億8000万円の損害賠償請求を東京地裁に起こした。

■争点

 これに対し、被告の川崎重工業側は(1)エンジンは、防衛庁が指定した設計書などの仕様書に基づいて製作し、納入先は防衛庁だけ(2)諸外国では軍用機について、機体や装備品自体の損害にPL法の適用は除外されている(3)契約時の原価に含まれる危険負担の責任保証期間(1年)を経過している−などと反論するとみられる。防衛装備品の調達は、「官」側の意向が強く反映されており、被害者救済を目的とするPL法になじまないというのだ。

■高額な保険料

 PL法に基づく損害賠償請求訴訟は今年2月現在、90件(内閣府調べ)あるが、国が原告となった事例はない。さらに、防衛装備品のように国が製作に「関与」して被害者となった事例について、PL法の保護対象となるのかの議論は、ほとんど行われていない。

 防衛庁では平成7年ごろ、PL法の時効(製造出荷から10年間)までにかかる保険料を契約価格に上乗せすることを検討したが、「費用がかかりすぎる」として見合わせていた。

 防衛企業関係者は「防衛装備品の場合、民間のように保険料を価格に転嫁できず、自己負担しなければならない」と不安をもらした。

 PL法に詳しい福岡大学法科大学院の朝見行弘教授(民法)は「メーカー側は、今後も同種の事故があったら多額の損害賠償が発生するため、国の主張を容易に認めることができないのでは」と分析している。

(08/28 01:45)

http://www.sankei.co.jp/news/060828/sha009.htm