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2006年08月17日(木) 23時45分

教科書は?占星術は? 惑星の新定義に反響続々朝日新聞

 太陽系の惑星を今より3個増やそうという国際天文学連合(IAU)の惑星定義委員会の提案が、反響を呼んでいる。チェコ・プラハで開催中の総会で24日に予定される採決で、新しい定義はすんなり認められるのか。そこは天文学者たちにも見通せないという。

「新惑星」の大きさ比較

 米メディアは新定義を大きく取り上げた。しかし、その関心は惑星が増えることではなく、冥王星が惑星の地位にとどまった点に集まっている。冥王星は従来の9惑星のうちで唯一、米国人が発見した惑星。しかも、今回の定義の見直しが、そもそも「冥王星は惑星か」という論争に端を発していたからだ。

 「冥王星、当面は太陽系内での地位を維持」

 ニューヨーク・タイムズ紙は、16日付朝刊1面でこう伝えた。

 ワシントン・ポスト紙も同じく1面で「冥王星の新たな地位は『プルートン(冥王星型惑星)』の見通し」と報じた。

 冥王星は1930年、米天文学者クライド・トンボーが発見した。このため、米国民は冥王星への愛着が強い。かつて冥王星を他の惑星と区別して展示したプラネタリウムに、全米の児童から抗議が殺到する「事件」が起こったほどだ。

 だが、冥王星は月より小さく、しかも軌道が他の8惑星の共通軌道面から大きくはずれ、傾いている。このため「冥王星は惑星か」という議論が常につきまとってきた。

 新定義では、米観測グループが昨夏に「第10惑星」と発表した「2003UB313」と、従来は冥王星の衛星とされていた「カロン」、これまで小惑星と分類されていた「セレス(ケレス)」が惑星の仲間に加わる。

 その上で、「プルートン(冥王星型惑星)」という特別なグループを新設。冥王星、カロン、「第10惑星」の三つをこのグループに分類した。

 カロンを衛星から惑星に「昇格」させた点などについて「事態を混乱させる」といった批判も聞かれるものの、「冥王星を惑星と規定するほとんど唯一の方法」「すばらしい妥協だ」などと評価する専門家の声を、米メディアは伝えている。

 一方、東京工業大の井田茂教授は「惑星形成の専門家で、冥王星を惑星と考える人はいない」と話す。「小天体が集まって一つに合体し、その軌道上で最大となった天体を惑星と見なしている」

 日本惑星科学会会長の向井正・神戸大教授も「理論的には冥王星をはずした方がすっきりする」。しかし、「長い間惑星として教科書にも載っていて、はずすことの影響は大きい」といい、「新しい惑星がどんどん増えれば、もう一度議論し直す必要が出てくるかもしれない」と見る。

 新定義が認められるとどんな影響が出るのか。

 理科の中学生用教科書を出している東京書籍は、「いまは、来年度用を製作する最後の段階で、変更が決まっても間に合うかどうかは非常にぎりぎり」という。

 文部科学省によれば、検定終了後であっても客観的事実の変化は訂正で反映できる。「惑星の数や定義」もこれに当たるが、訂正の申請から認可まで1週間はかかる。

 国立天文台が編集する理科年表。こちらは、11月の発行に十分間に合うと、あわてていない。

 架空の第10〜13番惑星が登場するSFアニメ映画「トップをねらえ!」を10月に公開するガイナックスの神村靖宏さんは「SFはもともと虚構の世界。地球の学会が定義を変えたからといって、我々が勝手につくった11番惑星がなくなるわけではない」。

 古来の占星術では、水、金、火、木、土の5惑星と太陽、月を合わせた七つを重視した。心理占星術研究家の鏡リュウジさんは「1781年に天王星が発見されたときは、市民革命が起きて人類の意識が変わって新しい星が必要になったと理屈づけをした」という。

 いまや占星術の世界は一枚岩ではない。七つだけにこだわる守旧派から、何万個もの星をどんどん取り入れる改革派まで千差万別だ。「新定義をいち早く取り入れる人もいるでしょう」と鏡さんは予想する。

http://www.asahi.com/national/update/0817/TKY200608170461.html