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2006年08月17日(木) 00時00分

急増ネット取引トラブルを解決する——仲裁機関「ECネットワーク」が発足読売新聞


ECネットワークのサイト。URLは、http://www.ecnetwork.jp/

 ネット販売やネットオークションで、サイト運営者と顧客、取引者間で起きたトラブルを仲裁する民間機関「ECネットワーク」(東京・渋谷区)が発足した。ネット商取引の「判例」を基に、売り手と買い手の円満な「和解」を目指す。

中小ショップがターゲット

 ネット上で商品やサービスを売買する電子商取引(EC)市場が拡大している。経済産業省などの調査によると、企業対消費者間の売買額は01年に1兆4800億円だったのが、04年には5兆6000億円にまで膨らんでいる。しかし、ネット売買の普及につれトラブルも多発。全国の消費生活センターには「代金を払ったのに商品が届かない」「違う商品が届いた」などといった相談が寄せられ、泣き寝入りも珍しくない。一方、販売サイト側も「入金がない」「商品に問題がないのに補償を要求された」などのクレーム処理に追われている。

 大手サイトの場合、法務室などの専門部署で対処できる。だが、中小サイトは窓口どころか、トラブル解決のノウハウも持っていないのが実情だ。ECネットワークが注目しているのは、こうした中小のショップサイト。会員(1口1万円から)になると、トラブルの解決策をメールで助言してくれる。一方、消費者側は無料で相談できる。


ECネットワーク理事の沢田登志子さんと(右)と原田由里さん

 「実店舗と違って対面販売しないネット取引は、歴史も浅く常識的な商慣行・ルールがまだ出来上がっていません。このため売り手・買い手、双方のささいな食い違いがトラブルに発展しがちなのです。その解決策を第3者の立場から助言するのがECネットワークです」(理事の沢田登志子さん)。

 ECネットワークは、ネット取引にまつわるトラブル事例ごとに、細かな解決策を提案している。そのノウハウは、一朝一夕にして出来上がったのではない。

 前身は、経産省の協力で96年に発足した電子商取引推進協議会(ECOM)内に設けられたネットショッピング紛争相談室。02年〜06年3月にかけネット取引トラブルの相談を受け付ける実証実験をした。この間、約5000件もの相談が寄せられたものの、予算がつかず相談室の解散が決まった。しかし、ネットトラブルの解決機関として存続を望む声が強く、有限責任中間法人としてECネットワークが今年4月に発足した。

ADR法で国のお墨付き

 ただし、公的機関ではないため、双方に斡旋案を出しても何ら法的拘束力はない。このため、入会したネットショップにトラブル時には斡旋案に従うことを義務づけている。

 活動の後押しになると期待されるのが、来年施行となるADR(裁判外紛争解決手続)法だ。これはトラブルを裁判に頼らず民間組織の仲裁で解決するため、調停・斡旋を行う組織を国が認証する法律だ。ECネットワークは、ADR機関としての申請を予定している。国のお墨付きは、発足したばかりのベンチャー法人のバックボーンになるはずだ。

 現在、会員となっているネットショップは数えるほど。しかし、今年は200、将来は1000以上の会員獲得を目指す。お手本にしているのがアメリカのBBBだ。誇大・不正広告の是正や紛争処理の実績を持つ。ネット取引でのトラブル解決も指導しており、アメリカではBBBマークの有無が、ショッピングサイトの信頼性を左右する。ECネットワークはBBBと提携しており、アメリカのサイトと日本の消費者間でトラブルが発生した際に、仲介を依頼できるようになっている。

 「『日本版BBB』であるECネットワークの会員になっていることが信頼できるネットショップの目印となり、ひいてはトラブルの防止に役立つはず」と沢田さん。ショッピングサイトが信用度で淘汰される時代を迎えつつあるのかもしれない。(林 宗治・編集部/2006年7月24日発売「YOMIURI PC」9月号から)

BBB  「Better Business Bureau(ベター ビジネス ビューロー)」。公正な取引のために1912年に設立された非営利団体。URLは、http://www.bbb.org/

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20060816nt03.htm