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2006年08月17日(木) 03時05分

<多重債務>「返済楽に」と「一本化」勧め…熊本市の男性毎日新聞

 「借りすぎ防止」のために使われるはずの顧客の信用情報が、当然のように悪用されていた。「600万円の返済は大変でしょ。うちで借りるほうがお得ですよ」。熊本市の多重債務者の携帯電話は、借り入れの明細を知った大手消費者金融からの勧誘で日に何度も鳴る。その繰り返しで借金は何倍にも膨らみ、マイホームを失いかねない状況に追い込まれた。【多重債務取材班】
 7月中旬、熊本市の男性(68)は、大手消費者金融A社の女性社員から電話を受けた。記者は男性の了解を得て約40分間のやりとりを録音した。
 「現在のお借り入れは5社で600万円ですね」。社員は男性の借入先と債務額、最近の返済日をよどみなく列挙した。黙り込む男性に「これは情報センター(のデータ)なんで」と情報の入手先を自ら明かした。
 その全国信用情報センター連合会(全情連)は、個人の消費者金融の利用状況を蓄積、提供する各地の信用情報会社が76年に結成し、信用情報の適切な管理や利用を指導する立場にある。
 A社は、自宅を担保に100万円上乗せした700万円のローンを提案した。毎月11万円余りを7年で返済する契約で「書類はできている」という。「返せない」と答えると、すかさず切り返した。「返せないわけないですよ。(金利を下げて借り入れを1社に)まとめた方が安くなるじゃないですか」
 男性はJR九州で車掌を務め、93年に退職。退職金から1500万円を出し、母の貯金と合わせて2200万円で家を新築した。今は妻子4人で暮らす。酒も賭け事もやらず、借金と無縁の余生を送るはずだったが、再就職して歯車が狂い始めた。同僚に頼まれ、消費者金融で50万円を借りて渡した。同僚はすぐに姿を消した。もう退職金は残っていない。借金は01年末で3社120万円に膨らんだ。
 ほどなく大手B社から「今より返済が楽になります。自宅を担保に債務をまとめませんか」と誘われた。金利はそれまでよりは低い23%。「少しでも安くなれば」と、担保設定などの諸費用を含めて200万円のローンを組んだ。しかし、月々の支払額は増え、他社から借りては返す悪循環にはまった。
 男性はその後もA社、B社と交互に「債務の一本化」を繰り返す。2社は信用情報を使い、競りのように少しずつ金利を下げながら貸付額を増やす。1人の債務者をキャッチボールしているかのようだ。恥を忍んで親族に借りた150万円を返済に充てたが、焼け石に水だった。
 A社が今回提示した金利は、B社より0.1%だけ低い9.5%。「なぜ最初から9.5%で貸さなかったのか」。男性がこう尋ねた瞬間、社員は初めてたじろいだ。「最初から? できないです。そういう商品がなかったんで」
 社員は最後にこう言った。「どちらを選ぶかということですよ。全体として安くなって7年間できれいに終わるか、B社さんに高いまま払い続けるのか」
 ◇情報をお寄せください。ファクス(03・3212・0635)、Eメール t.shakaibu@mbx.mainichi.co.jp 〒100—8051 毎日新聞社会部多重債務取材班。
(毎日新聞) - 8月17日3時5分更新

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