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2006年08月10日(木) 18時42分

景気点検:企業から家計への回復波及は予想以上の遅れ=連合総研所長ロイター

 [東京 10日 ロイター] 財団法人・連合総合生活開発研究所の中名生隆所長(元経済企画庁事務次官)は4日に行われたロイターとのインタビューで、企業部門から家計部門への景気回復の波及が予想以上に遅れていると指摘した。組合員30人以下といった零細企業の回復が遅いためだという。景気の注意点として外需減速と株価低迷を挙げ、今回の景気回復が、いざなぎ景気を超える可能性は高いとしたものの、その後については、慎重に見る必要があるとした。
 インタビューの詳細は以下の通り。
 ──景気の回復が続いているが、注意点はあるか。
 「企業部門は非常に良い。機械受注の先行指標とも考えられる工作機械受注は、一時前年比マイナスとなったが、また戻してきた。政策投資銀行が発表した設備投資見通しも良い。企業の収益が良く、それが設備投資に回っている」
 ──企業部門から家計部門への波及をどうみるか。
 「景気回復は50カ月を超えるが、家計収入への波及は思った以上に遅れているようだ。日本経団連などの諸調査では、家計収入は去年より少し良く、夏のボーナスも良いということだったが、そうした調査では組合員30人未満の企業は十分カバーできていないのではないか。毎月勤労統計の現金給与総額などの動きをみると、今年に入ってあまり良くない。組合員数30人以上の企業では、そこそこの伸びになっているが、30人未満の企業では悪い」
 「30人未満の企業の数字については、今年1─6月期はたまたま所得の低いサンプルに当たって、それが影響しているとの見方があるが、必ずしもその期間だけ悪いというわけではない。このように統計が増幅している面があり、天候不順も多少効いたかもしれないが、実態としては零細企業がそれほどまだ良くなっていないということではないか」
 ──雇用形態をみるとパート比率が下がって、賃金も改善していると言われている。
 「雇用の中身をみると、これまではパートが増えて、一般労働者が増えず、全体の平均賃金は下がっていたが、05年あたりから是正されてきた。しかし一般労働者のうちで、契約社員、派遣社員、嘱託という、正社員でない人々が相変わらず増えている。今年1─3月は、はじめて正規雇用者が若干プラスになった。しかし非正規の方が伸びが高く、非正規率はまだ増え続けている状況だ」
 「企業から家計へのバトンタッチは去年あたりからみられるが、今年に入り、そう順調にはいっていないようだ。零細企業や非正規労働者も含めると、波及は遅々とした状況だ」
 ──企業から家計へのバトンタッチ以外の注意点はあるか。
 「今回の回復は輸出の伸びがきっかけになっている。先進国、中国、インドなど合わせて実質5%程度のかなり例外的な高成長が続き、日本がそれに乗って輸出を伸ばしたという面がある。しかし米国経済は4─6月期成長が2.5%にとどまり、鈍化してきた。原油価格の上昇も、日本経済への直接の影響は昔より小さいが、ひとつのマイナス材料だ」
 「株価も今年に入って冴えない。ライブドアなどの一連の事件で個人投資家の熱気が冷め、米国、欧州、中国、インドなどの株価調整と連動した面もある。全体のマインドや消費への影響が気になる」
 ──デフレ状況をどうみるか。
 「デフレ脱却宣言も出ていないし、輸入一次産品の価格高騰などで、GDPデフレーターはマイナス圏にとどまっている。しかし、素直に考えると、もうデフレへの逆戻りは心配しなくていいのではないか」
 ──景気回復の持続性について、どう考えるか。
「多分年内は景気回復が持続して、いざなぎ超えということになりそうだが、その後は、前出のマイナス材料もあり、慎重にみている。今回の回復局面では、途中で2回も踊り場があったが、戦後の日本の景気回復を振り返っても、こういうことは無かった。過去の景気パターンから類推できる状況ではないので、今度もうまくいけば乗り越えられる可能性はある」
 「今年度の成長は、内閣府試算のプラス2.1%は達成可能なのではないか。しかし、海外経済が少し悪くなっており、来年度は今年度より少し減速となりそうだ」
 ──日銀が年内にも0.25%ポイントの追加利上げを行うとの予想もある。
 「しかるべき状況になって、年内に0.25%ポイントの利上げがあっても、それほど大きな影響は無いのではないか。量的緩和解除も、金利引上げも、早ければ今年前半とみていた」
 ──財政再建などに絡んで消費税率引き上げの議論があるが、経済への影響をどうみるか。
 「消費税率を何パーセント上げるか議論するのはまだ早いのではないか。最近発表された05年度決算では、一般会計税収は49.1兆円と、当初予算よりも5兆円くらい自然増収となった。04年度も4兆円程度上振れた。一般的には社会保障費の財源が必要で、消費税率も5%ですむとは思わないが、具体的に数字を決めるのはもっと先で良い」
(ロイター) - 8月10日18時42分更新

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060810-00000294-reu-bus_all