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2006年08月10日(木) 00時00分

ネットバンクから預金が消えた…9分で200万ZAKZAK

パスワード盗まれ勝手に振込

 【不審なメール】

 「ご依頼の振込手続きを受付けました。受付番号×××…」

 今年4月24日午前8時58分。東京都内在住のネット通販業の男性(28)のもとに、ネット銀行から振り込み手続きを完了したことを知らせるメールが、携帯電話に送られてきた。4分後の9時2分にも別の振り込みの知らせが届く。

 「変だな…」

 だれかに現金を振り込んだ記憶がない。とりあえず、銀行に「口座が変な動きをしているので調べてください」と問い合わせた。

 応対に出たコールセンターの女性の言葉に愕然(がくぜん)とする。「2人の口座に50万円ずつ振り込まれています」−。

 その場で口座を止めるよう催促したが、その間にも、同9時4分と7分に別の振り込み手続きが完了していた。1回当たり50万円。計200万円と4回分の振込手数料計840円が、わずか9分間で口座から消えた。

 何者かが男性の口座番号、パスワードを盗んで勝手に振り込み手続きを実施。「ヤマグチショウゴ」に50万円、「マキノユタカ」には3回にわたり計150万円を勝手に送金したのだ。

 犯人は用意周到で、男性が警察に駆け込んだ同10時ごろ、東京・蒲田にある複数のコンビニエンスストアのATM(現金自動預払機)から、200万円を全額引き出している。

 「あとでネットに詳しい人が教えてくれたんですが、ヤマグチとマキノの口座はネット上で不正に売買されていたようですね。28歳のぼくには200万円は大金。事業の運転資金だったのに」。被害男性が営んでいたネット通販は休業に追い込まれ、男性は今、アルバイトで生計を立てている。

 【被害激増】

 ネット銀や一般銀行のネット・バンキングで、預金の不正引き出しが急増。全国銀行協会(全銀協)によると、平成17年4月から18年3月末までに37件、総額約3000万円の被害が発生している。

 だが、大手ネット銀の関係者によると、「5万円以下など比較的被害額が小さい場合、被害者が届け出ないこともあり、実際の件数は(37件の)数倍か数十倍になるだろう」という。

 偽造キャッシュカードで預金を盗まれた場合は、「偽造・盗難カード預貯金者保護法」(今年2月施行)で、よほどの過失がないかぎり、金融機関が全額補償してくれる。しかし、ネットでの取引は同法の対象に含まれない。

 最近では、同法の精神を受けて、各行とも保険をかけるなど補償対策に力を入れだしたが、補償に応じないところも少なくない。実際、先の被害男性が口座を持つネット銀では、「ネット・バンキングの不正によるお客さまへの被害補償は、現時点ではしていない」との規定を盾に拒否している。

 男性は「家族がやったんじゃないかとか散々失礼なことを言って、揚げ句には『法律的に払う義務があるなら払う』と開き直られた。他の銀行は補償しているのに、なぜここだけがダメなのか」と憤る。

 【手口と対策】

 一体、パスワードはどのように盗まれたのか。

 セキュリティー・ソフトの開発大手、トレンドマイクロは、スパイウエアの一種「キーロガー」ではないかと推測する。

 「キーロガーは、キーボードで入力した情報を記録するソフトで、無料ソフトに仕組まれていたり、サイトにアクセスしただけで感染したりする。感染したパソコンで、利用者がネット銀の口座にアクセスすると、パスワードなどがそっくり記録され、キーロガーを仕込んだ犯人にその情報が転送されたりする。最近は感染したことさえわからないものもある」(同社広報)

 感染した実感がないとはタチが悪い。被害を未然に防ぐ方法はないものか。

 偽造キャッシュカードやネット犯罪に詳しい松村テクノロジーの松村喜秀社長は、妙なソフトをダウンロードしたり、怪しいサイトにアクセスしたりしないことを大前提として、「ネット銀の使い方を限定すること」と指摘する。

 「いつまでも預金したままにせず、入金だけに限定する。入金が確認できたら、すぐに一般銀行の口座に預金を全額移すこと。ネット・バンキング自体を利用しないのがベストだが、便利なのでそうもいかない。使うならこれに徹すること」と力説する。

 「パソコンですか? 特に変わった使い方をしたとは思えませんが」と肩を落とす被害男性。

 ネットの世界では、どこに落とし穴があるか分からない。

ZAKZAK 2006/08/10

http://www.zakzak.co.jp/top/2006_08/t2006081030.html