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2006年08月09日(水) 00時00分

消費者団体が“代理提訴”読売新聞

来年6月からもう泣き寝入りしない

 高齢者らを狙う悪質な消費者トラブルが多発するなか、被害者本人に代わって、消費者団体が事業者を訴えることができる消費者団体訴訟制度(団体訴権)の導入が、先の国会で決まった。

 来年6月から実施される。制度を有効に活用し、トラブルの未然防止や拡大防止につなげるには、消費者団体と消費者の協力が欠かせない。(斎藤圭史)

敷金返してもらえない/長時間勧誘受けた

 7月8、9日、東京のNPO法人「消費者機構日本(通称COJ)」が開催した「スクール・教材販売 契約トラブル110番」。子どもの学習教材販売や家庭教師サービスなどへの苦情、問い合わせが約90件寄せられた。

 「モニター価格で得だと3日間勧誘され、学習教材を契約。実際にその価格は存在せず、安い商品を高額で買わされた」というウソの説明、「いったん支払った料金は一切返金しないと言われた」など解約に関するものが多かった。

 COJの磯辺浩一事務局長は「同様の悩みや、契約を結んでしまった人は、まだいるはず。寄せられたのはほんの一部でしょう」と話す。今後、相談内容を分析し、事業者側へ改善を申し入れる考えだ。

 COJが、このような活動に積極的に取り組むのは、消費者契約法の改正で、消費者団体が、不当な契約条項や勧誘行為の差し止め訴訟を起こせる団体訴権が導入されたためだ。磯辺さんは「制度実施後の活動を円滑に進めるため、今から技術を磨いている」という。

 団体訴権では、国の認定など一定の要件を満たした消費者団体は適格消費者団体として、日常的に情報を収集。被害が頻発するものや、広範に及ぶ恐れがあるものには、相手方に事前に通知した上で、裁判所に差し止めを提起できる。対象となるのは「賃貸マンションの解約時に敷金を一切返してもらえなかった」「自宅で長時間、勧誘を受けた」などの契約トラブルだ。

 消費者団体が勝訴すれば、悪質な契約や勧誘行為自体をやめさせられるので、被害者個人だけでなく、他の消費者への被害拡大を防げる。既にトラブルを抱えている人は、それぞれの賠償請求で、判決を活用し、交渉を円滑に進めやすくなると見られる。

 また、消費者団体は団体訴権を後ろ盾に申し入れや交渉ができるため、裁判になる前に、事業者側が自主的に契約条項の改善などに動き出すことも期待される。

 現在でも、消費者契約法によって各個人が裁判を起こし、被害の回復を求めることはできる。ただ、実際は訴訟費用や時間、知識不足などで裁判への敷居は高く、泣き寝入りするケースが少なくない。

 団体訴権の導入を求めてきた日本生活協同組合連合会の小林真一郎さんは「これまではあくまでも個別救済で、潜在的な被害には手をつけられなかった。多くの人に同時多発的に起きる契約トラブルの根本的な解決にはならなかった」と話す。

 2005年度、全国の消費生活センターに寄せられた全相談数のうち契約や解約に関する相談の割合は83・3%。1995年度の64・7%から約20ポイントも増え、ここ3年は80%台で高止まりしている。

 小林さんは「団体訴権は、一般的に消費者より知識や経験が豊富な消費者団体に訴える権利を与えた点で画期的。トラブルの減少に役立つ有効な道具になる」としている。

資金と情報確保がカギ

 制度を有効に活用するため、消費者団体に残された課題は少なくない。

 内閣府によると、来年6月の制度開始に向けて準備を進めている消費者団体は、COJを含めて、東京や関西などを中心に全国で約10団体。大分県は今年3月、2010年度までの同県の消費者施策を盛り込んだ消費者基本計画に、「県内1団体の設立」を明記した。同県県民生活・男女共同参画課は「安心、安全な生活のために、身近にあることが望ましい」と、同県内に80以上ある消費者団体の連携などを後方支援する。

 全国消費者団体連絡会(東京)の神田敏子事務局長は「消費者の声を広く吸い上げるためにも、名乗りをあげる団体が多くて困ることはない」と話す。

 とはいえ、活動を続けていく上でのハードルは高い。各団体が最も懸念するのは、活動資金の確保だ。

 たとえば、COJは制度開始後、年間40件の申し入れと4件の訴訟で、経費は計2500万円程度と見込む。しかし、今年度の収入は、約1300万円。関西を中心に活動を予定している消費者支援機構関西(KC’s)も、年3件の訴訟で1500万円ほどと試算する。

 KC’s事務局長の西島秀向(ひでひさ)さんは「現状では厳しい。金がないから活動できないでは、意味がないのだが」と話す。

 両団体は今後、自治体が個人向けに貸し付ける訴訟費用を団体にも貸せるよう求めるほか、申し入れ活動や企業向けセミナーの開催などで認知度を上げながら、支援企業などを増やしたいとしている。

 また、適格団体の活動源となる情報をどう集めるかも課題のひとつ。団体の申し入れや訴訟は「不特定かつ多数の消費者の利益のため」(内閣府)に行うことが前提で、ある程度の被害の広がりを確認する必要があるためだ。

 神田さんは「団体訴権では、1本の情報が結果的に多数の人を救う可能性がある。そのために消費者は、自分のことだけでなく、社会の利益になると考えて、消費生活センターや消費者団体にも連絡してほしい」と呼びかける。

 その一方で、適格団体に対しても、「制度の意義を消費者にPRすると共に、各地のセンターや適格団体ではない消費者団体と連携していくことが必要」と指摘している。

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 苦情の申し出先 消費者団体は0.5%のみ

 国民生活センターが今年3月にまとめた国民生活動向調査では、商品やサービスに不満があったり、被害を受けたりした人のうち、何らかの機関に苦情を持ち込んだ人の割合は55.3%だった。苦情の申し出先としては、購入した店やメーカーなどが圧倒的に多く、消費生活センターは4.6%、消費者団体はわずか0.5%に過ぎなかった。

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20060809ok02.htm